本研究の目的は、材料の分子機能に水分子が重要な役割を果していると考えられているバイオマテリアルについて、振動分光による構造機能相関研究を実施することである。そのために本研究で準備した、中赤外透過フローセルと近赤外透過フローセルを用いて乾燥試料が含水する過程、あるいは含水試料が乾燥する過程を時間依存測定し、中赤外領域における基準振動、あるいは近赤外領域における倍音・結合音の変化を観測した。得られた時間依存スペクトルは、Multivariate Curve Resolution (MCR) や二次元相関分光法によってデータ解析を行った。本研究では、水溶性バイオマテリアルであるpolyvinylpyrrolidone (PVP) と非水溶性バイオマテリアルであるpoly(2-methoxyethyl acrylate) (PMEA) を用いて実験を行った。これにより水和水のO-H伸縮振動について、基準振動でみられる不凍水、中間水、自由水に帰属されるそれぞれの信号に対応すると考えられる倍音を、ある程度、帰属することができた。またこれらの実験・解析結果を、量子化学計算によるシミュレーションスペクトルと比較し、帰属の妥当性を考察した。
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