研究領域 | 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成 |
研究課題/領域番号 |
22H04564
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
宮田 隆志 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50239414)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ハイドロゲル / エントロピー / 刺激応答性 / 分子インプリント / 分子認識 |
研究実績の概要 |
本研究では,動的分子結合サイトを有するスマート水圏機能材料を設計し,そのエントロピー抑制効果と分子結合能との関係を解明すると共に,動的分子結合能を利用した薬物放出制御への応用を目指している。本年度の研究実績を以下にまとめる。 (i) エントロピー制御によるスマート水圏機能材料の設計:温度変化によりコイル-グロビュール転移する温度応答性高分子鎖やpHに依存してヘリックス-コイル転移するポリペプチド鎖を用いて分子インプリントゲルやナノ粒子の合成に成功した。特に,分子インプリント法によるバルクゲルの調製やポリイオンコンプレックス形成を利用した分子インプリントナノ粒子を合成した。 (ii) スマート水圏機能材料の動的分子結合能の検討:水中で高分子鎖のエントロピー状態が異なるゲルやナノ粒子のコンフォメーションに及ぼす温度やpHの影響を検討した。温度刺激による温度応答性高分子鎖のコイル-グロビュール転移やpH刺激によるポリペプチド鎖のコイル-ヘリックス転移による標的分子吸着量の変化を調べ,外部刺激によるコンフォメーション変化により分子結合能が変化することを見出した。 (iii) スマート水圏機能材料の動的分子結合能を利用した薬物放出制御:スマート水圏機能材料のドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用を目指して,その動的分子結合サイトに薬物を結合させた分子インプリントゲルやナノ粒子を調製した。さらに,動的分子結合サイトに効率よく薬物を結合させたゲルやナノ粒子を調製し,薬物放出量が温度やpHによって変化することを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,温度応答性高分子鎖とpH応答性ポリペプチド鎖からなるゲル内に,分子インプリント法により動的分子結合サイトを形成させた。本年度の研究では,予定通りに分子インプリント法により温度応答性高分子ゲルおよびpH応答性ポリペプチドゲルの合成とそのコンフォメーション変化を確認でき,さらに薬物の放出も調べ始めることができたので,「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究では,動的分子結合サイトを有するスマート水圏機能材料を設計し,そのエントロピー抑制効果と分子結合能との関係を解明すると共に,動的分子結合能を利用した薬物放出制御への応用を目指す。今後は次のような研究項目(i)~(iii)について検討する予定である。 (i) エントロピー制御によるスマート水圏機能材料の設計:前年度に引き続き,温度応答性高分子鎖とポリペプチド鎖からなる分子インプリントゲルおよびナノ粒子を合成する予定である。 (ii) スマート水圏機能材料の動的分子結合能の検討:温度応答性高分子鎖のコンフォメーションがグロビュール状態(低エントロピー状態)やランダムコイル状態(高エントロピー状態),ポリペプチド鎖のコンフォメーションがα-ヘリックス状態(低エントロピー状態)やランダムコイル状態(高エントロピー状態)で網目形成することにより,鎖の自由度(エントロピー)が異なる分子インプリントゲルや分子インプリントナノ粒子を合成する。これらのエントロピー状態が異なる分子インプリントゲルや分子インプリントナノ粒子のコイル-グロビュール転移やヘリックス-コイル転移を温度変化やpH変化により誘起し,温度変化による温度応答性高分子鎖やpH変化によるポリペプチド鎖のコンフォメーション変化と標的分子の吸着量との関係を調べる予定である。 (iii) スマート水圏機能材料の動的分子結合能を利用した薬物放出制御:薬物キャリアとして最適なナノサイズの温度応答性ナノ粒子やpH応答性ポリペプチドナノ粒子に薬物を結合させ,温度やpHの変化によって誘起されるコンフォメーション変化を利用した薬物放出のON-OFF制御を試みる。これらの結果から温度応答性高分子鎖やポリペプチド鎖のコンフォメーション変化によってナノ粒子から瞬時に薬物放出できる結合支配型DDSの構築を目指す。
|