原子核密度汎関数理論を用いて、ニュートリノレス二重ベータ崩壊(0νββ)およびそれに関連する過程であるニュートリノを2つ放出する二重ベータ崩壊(2νββ)や二重電子捕獲(2νECEC)などの半減期を高い精度で計算し、0νββの原子核行列要素、半減期計算の信頼性の向上を目指すのが本研究課題の目的である。 準粒子乱雑位相近似(QRPA)の効率的解法である有限振幅法を用いて0νββの原子核行列要素の計算を行うにあたり、二体崩壊演算子を一体演算子の積で表す必要がある。0νββの演算子は積分変数である中間状態のニュートリノの運動量および、球面調和関数による無限展開を含む一体演算子の積を用いて表現されるため、スピンの3成分に対応する3つの一体演算子積のみで書ける2νββの場合と比べると、有限振幅法の計算量が非常に増大する問題があった。2023年度は有限振幅法のエミュレータを定式化・開発し、興味あるエネルギー領域の有限振幅法の解を重ね合わせることで、同じエネルギー領域のQRPA解、特に強度が大きい状態を非常に効率的かつ高精度に表現できることが明らかとなった。エミュレータの応用範囲は低エネルギー励起状態や、巨大共鳴全体の強度関数分布などの様々なQRPA解を含んでいるが、0νββの演算子を分解したときに現れる一体演算子は連続変数の関数として変化するため、代表的ないくつかの少数の一体演算子のみを用いてエミュレータを効率的に構成することができる。 また、原子核行列要素に効く中間状態のエネルギー領域に絞って重ね合わせの基底となる有限振幅法の解を配置することで、有限振幅法による0νββの原子核行列要素の計算量を数桁のオーダーで減らすことが可能であると考えられる。
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