研究領域 | 地下から解き明かす宇宙の歴史と物質の進化 |
研究課題/領域番号 |
22H04571
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
諏訪 雄大 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40610811)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 超新星爆発 / 中性子星 / ニュートリノ / 重力波 |
研究実績の概要 |
超新星爆発は、大質量星がその一生の最期に起こす大爆発である。星のコアが中性子星を形成するとともに引き起こされることがSN1987Aの観測により実証されているが、爆発機構はいまだ大きな謎のまま残されている。その理由として、超新星の瞬間は既知の全ての相互作用(重力、電磁気力、強い力、弱い力)が全て重要な働きを及ぼす極めて複雑な状況が実現されていることが挙げられる。こうした特性により、超新星の瞬間には多種多様な信号が発生する。したがって、超新星はマルチメッセンジャー観測の絶好のターゲットである。銀河系内で起これば、ニュートリノと重力波を駆使して爆発機構に迫ることが可能となるだろう。しかし、爆発直後(1秒以内)は様々な流体不安定性に代表される物理過程が複雑に絡まり合っており、定量的な予言を行なうことが非常に困難である。そこで、本研究では爆発開始後1秒以降の放射に着目し、定量性の高い理論モデルを構築することを目標とする。また、実際に超新星が起こったときに実験データ解析に活用できるパイプラインを作成する。これらを用いて、中性子星冷却期のマルチメッセンジャー観測から中性子星の質量、温度、半径などの情報を引き出すことが期待できる。これらの情報はニュートリノ信号の強度を評価する上で本質的な物理量である。 初年度は、主に以下の3つの研究に進展があった。 1) 超新星ニュートリノの解析解を用いてモック観測データを作成した。また、データ解析パイプラインコードを構築し、モックデータを解析したところ、中性子星の半径や質量がニュートリノ単独で精度よく決定できることを示した。 2) 20秒間の一貫した超新星計算の流体および時空情報を用いて重力波星震学の計算を行い、これまで提案されてきた近似公式の長時間的な振る舞いを検証した。 3) 可視光観測の進展を背景に、新しい超新星背景ニュートリノの解析手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は論文3本を出版し、さらに3本を投稿した。
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今後の研究の推進方策 |
データ解析の基礎的な枠組みを作ることができたので、今後は理論モデルの精緻化および解析パイプラインコードの汎用性を高める。具体的には、原始中性子星冷却計算では無視していた流体効果の取り込みや解析的モデルの精密化、そしてパイプラインコードの統計的な取り扱いをアップデートする。
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