研究領域 | ハイパーマテリアル:補空間が創る新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04581
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
亀岡 聡 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (60312823)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ハイパーマテリアル合金 / プラットフォーム / Al-Pd-Ru / 準結晶 / 近似結晶 / 過飽和固溶体 / リーチング |
研究実績の概要 |
本研究では、ハイパーマテリアルの代表格である準結晶・近似結晶合金の触媒材料への応用展開を目指し、表面構造と触媒特性(“実条件下”での)の相関性を評価・解析することを目的としている。本年度は、Icosahedral型Al-Pd-(Ru, Fe)系準結晶・近似結晶をターゲット材料として、触媒材料としての可能性を探った(①前駆物質としての検討、②準結晶・近似結晶触媒としての検討)。Al-Pd-Ru系において異なる相の合金を作り分けることに成功した:Al71Pd19Ru10 (IQC), Al72Pd16.4Ru11.6 (P40), Al70.4Pd14.7Ru14.9 (C1)。そこで、これら作製した合金試料を用いて、各種触媒反応試験(CO酸化反応: CO + 1/2O2 → CO2、C2H2部分水素化反応: C2H2 + H2 → C2H4)により合金相と触媒特性との相関を検討した。 作製した各種Al-Pd-Ru系試料を粉砕・微粉末化(20-75μm)し、20wt% NaOH水溶液中でリーチング処理(室温, 24h)行った。その結果、合金中のAlが選択的に溶出することで母合金構造は消失しPdとRuが原子レベルで互いに交じり合った過飽和固溶状態になっていることがわかった。ここで興味深い点は、バルク金属においてPdとRuは固溶体や金属間化合物を形成しない非固溶系である。そこで、CO酸化反応特性を調べた。その結果、L-P40 > L-C1 > L-IQC > L-DAP > L-DQCとなり、P40相から作製したPd-Ru合金が最も高いCO酸化活性を示すことが判った。このことは、CO酸化において、PdとRuの役割が異なることからPd/Ru比率に最適値が存在すると推察した。Pd/Ru比を制御できる触媒合金前駆物質としてAl-Pd-Ru系は有効であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Al-Pd-Ru合金系をターゲットとしたことで、ハイパーマテリアル合金が前駆体合金として有効であることが判明した。ここで興味深い点は、バルク金属においてPdとRuは固溶体や金属間化合物を形成しない非固溶系であるが、ハイパーマテリアル合金Al-Pd-Ruをリーチングすることで一段でPd-Ru合金を合成できることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、ハイパーマテリアルの代表格である準結晶・近似結晶合金の触媒材料への応用展開を目指し、表面構造と触媒特性(“実条件下”での)の相関性を評価・解析することを目的としている。本年度は、前年度に作製した各種合金試料に対して、各種手法(XRD, HAXPES, SEM-EDS, TEM, ICP etc.)を用いキャラクタリゼーションを行い、触媒特性の発現要因を調査し理解を深め、高性能触媒材料開発の指針を得る。また、ここで得た知見をもとに他の合金系および反応系においても調査を行う。
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