グラフェンのバンド構造を変調させ、特異な物理現象を発現させるアプローチとして、「格子ひずみによって誘起されるゲージ場」を用いる方法がある。申請者は、これまでに独自手法を用いてグラフェンに周期的なひずみを導入し、ひずみ誘起ゲージ場による電気伝導特性の変調を観測してきた。 本研究提案では、導入するひずみの周期性の枠組みを広げ、高次元の対称性を持つひずみをグラフェンに導入する。さらに、電気伝導測定によって高次対称性の効果を検出することで、グラフェンのハイパーマテリアル化の可能性を探ることを目的としている。 昨年度は、グラフェンに対して非周期的に変調する歪みを導入する手法の改良を行なった。電子線リソグラフィーによりシリコン基板上にネガ型レジストの微細な凹凸構造を形成し、その上にグラフェンを貼り付けることで歪みを導入した。測定装置の移動や電子線描画装置のトラブルにより、試料の電気伝導測定までには至らなかったものの、必要な周辺技術の開発を行うことができた。
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