準周期的構造を持つ2次元結晶界面(ファンデルワールスハイパーマテリアル)におけるスピン自由度を反映した光物性の研究を推進した。 2次元半導体界面における光起電力効果の研究では、対称性の異なる2次元結晶を積層させたヘテロ界面においてスピン自由度を反映した円偏光光起電力効果が生じることを明らかにし、その起源を明らかにした。特に、積み重ねる2つの2次元結晶の鏡像面が平行な場合と垂直な場合の2つの場合における光起電力効果の振る舞いを詳細に調べ、2つの2次元結晶の鏡像面が平行な場合には円偏光光起電力効果は鏡像面に垂直な方向のみに観測され、2つの2次元結晶の鏡像面が垂直な場合には面内の(元の鏡像面に垂直な方向と平行な方向の)どちらの方向にも円偏光光起電力効果が観測されることを明らかにした。これらの結果は、極性構造およびキラル構造をそれぞれ反映した振る舞いと考えられ、準周期的2次元結晶界面においても分極やキラリティーが物性に影響を及ぼしていること示す一つの例である。 磁性2次元結晶界面における第二次高調波発生(SHG)の研究では、磁気異方性の異なる2次元磁性体であるCrI3とCrCl3のヘテロ界面のSHG測定を行い、低温の磁気秩序相ではヘテロ界面部分においてCrI3やCrCl3単独のものとは異なるSHGの振る舞いが観測され、面内磁場を印加することでSHGの強度や偏光角度依存性が変調されることから、エキゾチックなスピン秩序や対称性が実現していることが示唆された。これにより、磁性ファンデルワールスハイパーマテリアルの新しい制御手法と物性開拓の可能性が見出されたと言える。
|