2023年度は、Yb系価数揺動ハイパーマテリアルにおける電子状態と磁気特性の研究を中心に行った。特にAu-Al-Yb 1/1近似結晶やZn-Au-Yb1/1近似結晶、2/1近似結晶に着目し、結晶合成、磁化率測定、およびSPring-8 BL12XUを利用したYb価数の圧力依存性の測定を行った。 試料合成の結果、従来の試料において見られた不純物相の混入は見られなくなった。これにより、低温における磁化率の本質的効果を見ることができ、Zn-Au-Yb 1/1ACと2/1ACにおいては、磁化率の絶対値・温度依存性に明確な違いは無く、いずれの系もAu-Al-Ybにおいて見られる冪的発散は見られないことが明らかになった。 一方、価数測定によると、これらの3つの系は、それぞれ特徴の異なる圧力依存性を示す事が明らかとなった。Au-Al-Yb 1/1近似結晶は、臨界圧力2 GPaにおいて、価数の圧力係数が発散的に増加する異常を観測した。これは、従来の組成変化による実験結果や、理論計算とも定性的一致を示し、臨界圧力において価数量子臨界点を通過すること示している。一方、Zn-Au-Yb 1/1近似結晶においては、臨界圧力4.5 GPa近傍において不連続的な価数変化(一次相転移)を見出した。また、Zn-Au-Yb 2/1近似結晶においては、価数異常が明瞭に見られなくなる事を見出した。これらの結果に対し、臨界価数揺動モデルに基づいた解析を行い、論文発表を行った。
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