互いに非相溶な二成分の高分子鎖からなるブロック共重合体のミクロ相分離構造には成分比に応じて多様な構造を形成する。近年、球状ミクロ相分離構造を中心に新しい球状ドメインの充填構造(準結晶を含む)が発見されてきた。これらは金属系結晶やコロイド結晶などによる結晶形成機構に類似する点に加えて、高分子特有の性質が絡んでいる。それは、高分子球状ミセルが凝集する際に、個々の高分子鎖のコンフォメーションに対するフラストレーション(エントロピー)が大きく寄与し、特異的な相分離構造(準結晶、近似結晶など)形成を困難にしている。そのフラストレーションを軽減させることが複雑相分離構造を発現の鍵となることが明らかになってきた。その観点で、成分比の異なる二元ジブロック共重合体ブレンド系にすること(一つは組成対称的、もう一つは組成非対称性が大きな共重合体)、構成するブロック共重合体鎖間の屈曲性(クーン統計セグメント長)の非対称性(マイナー成分のクーン長が大きい)を大きくすることが有効であることを確認した。また一連の研究過程で、偶然ではあるが、これまでブロック共重合体単独では未発見であった三重周期極小局面を有する新規相分離(P-surface)を発見するに至った。このP-surface構造の発現にも、高分子鎖のパッキンフラストレーションが大きく寄与し、フラストレーションを低減させるために適切な分子量の高分子鎖とのブレンドが重要であることが分かった。
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