研究領域 | ハイパーマテリアル:補空間が創る新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04594
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
関山 明 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (40294160)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 光電子分光 / 希土類 / 準結晶 |
研究実績の概要 |
準結晶・近似結晶における物質開発は希土類元素を含んだ系でもYb系準結晶における超伝導の発見、Tb系準結晶での強磁性など発展があり注目を集めている。この中でCeを含んだ準結晶の数は少ないなか、近年合成に成功したCe-Au-Ga系近似結晶を中心とした光電子分光を硬・軟X線励起など様々な励起光で行ったところ、現時点ではCe-Au-Ga系近似結晶に加えてCd-Ce近似結晶も4f電子状態が極めて局在的なスペクトル形状であった。さらにすでに報告している、Ce-Au-Ga系近似結晶のCe 3d内殻光電子スペクトルにのみ見られる3d94f1終状態多重項構造の大きなぼやけがchemical disorderに由来することが実験的に判明してきたが、他元素の内殻光電子スペクトルでも検証した。Ce-Au-Ga系近似結晶のAu 4f光電子スペクトルは確かに金単体のそれと比較するとピーク幅が広くなっているものの、その度合いはCe 3d内殻光電子スペクトルよりも小さかった。さらには強磁性を示し、同時にchemical disorderも一定以上存在するGd-Au-Al系近似結晶のAu 4f内殻光電子スペクトルを測定したところ、ピーク幅はCe-Au-Ga系近似結晶のそれよりも広くなっていることが分かった。 さらに我々は強磁性Gd-Au-Al系近似結晶の硬X線光電子分光を行ったところ、Gd 3d内殻光電子スペクトルでは明確な多重項構造が観測され、Gd3+状態にあることが確認された。もっとも、Gd化合物ではほぼ例外なく多重項構造は観測されるので、ピーク幅については今後の課題である。また、フェルミ準位近傍におけるスペクトルではCe-Au-Ga系近似結晶のそれとは異なる小さなピーク構造が観測され、磁気状態との相関は今後の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
査読有り論文発表にこそ至っていないものの、新たな近似結晶系の電子構造研究に進展が見られたこと、Ce系近似結晶における強相関Ce 4f局在電子状態の普遍的判明、Gd系とCe系の分光学的な電子構造およびchemical disorderによる電子状態への影響の判明の比較などでかなりの進展がみられ、同時にCe系近似結晶の研究はもうすぐ査読有り論文を発表できる見込みとなった。強磁性Gd系近似結晶の磁場中光電子分光および磁気円二色性測定は成功に至っていないが、その原因が判明し次年度には改善の見込みが十分あるためおおむね順調に進展と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのCe-Au-Ga系近似結晶の光電子分光による知見を学術論文として仕上げ、発表する。加えて、研究協力者の野末悟郎が海外の国際会議でも2件発表を行い、成果を国際的に広めるべく努力する。この過程でさらに国際会議論文も1報執筆・発表する。 また、2022年度には挑戦するも満足のいく結果が出なかった強磁性Gd-Au-Al系近似結晶の磁場中光電子分光による光電子磁気円二色性測定も進める。昨年度は試料ホルダーまわりに問題があり、測定時の試料温度が十分に低温ではないことが判明しており、そのための新たな試料ホルダーの開発も目処が立っている。今後、これらを確実に遂行することで新たな実験データを取得し、成果につなげる。
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