研究領域 | ハイパーマテリアル:補空間が創る新物質科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04599
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
小林 寿夫 兵庫県立大学, 理学研究科, 教授 (40250675)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 準結晶 / 近似結晶 / 放射光メスバウアー分光法 |
研究実績の概要 |
価数揺動Au-Al-Yb準結晶の近似結晶を用いてその近似度およびYbイオンの平均価数を変えながら、Yb サイトの局所構造と電子状態との関係を明らかにすることが目的である。そのために、Ybイオンの電子状態を明らかにするための手法として、本研究では174Yb放射光メスバウアー分光法を用いた。Auのような重金属原子やYbイオン濃度が少ない試料での測定可能性を考察すると、174Yb 同位体の濃縮が必要であることが分かった。100%174Yb同位体を濃縮したAu-Al-Yb準結晶と1/1近似結晶を作製し、自然存在比(非濃縮)試料と巨視的物性測定の結果が同一であることを確かめた。 SPring-8 核共鳴散乱ビームラインにより174Yb 同位体を濃縮したAu-Al-Yb,準結晶の1/1近似結晶試料を用いて、174Yb放射光メスバウアー・スペクトの温度・磁場依存性測定を行った。その結果、常圧力下で量子臨界性を示すAu-Al-Yb準結晶と通常金属状態のAu-Al-Yb1/1近似結晶での同一条件で174Yb放射光メスバウアー・スペクトルの吸収成分に相違を観測した。174Ybメスバウアー核における超微細相互作用は、Yb4fイオンの電子状態を直接反映している。すなわち、Au-Al-Yb準結晶とAu-Al-Yb1/1近似結晶中でのYbイオンの電子状態が異なることが分かった。1/1近似結晶の無磁場下での測定スペクトルを解析して、価数揺動Ybイオンの4f電子状態を議論するための超微細相互作用の温度依存性を求めることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
174Yb放射光メスバウアー分光法においては、十分なSN比の吸収スペクトルを測定する条件を確立することが研究を進める上での基本となる。174Yb同位体を濃縮した純良なAu-Al-Yb準結晶と1/1近似結晶の作製に成功した。さらに、分光学的には174Yb同位体を濃縮した分光単結晶(YbB12)の合成にも成功した。すなわち、主研究対試料の最適化と本研究で主測定手法の高度化を達成した。 その結果、174Yb放射光メスバウアー測定においては1/1近似結晶試料の温度依存性と2Kでの磁場依存性および準結晶試料の無磁場下での温度依存性のスペクトル測定を行った。スペクトルの解析については、1/1近似結晶試料の温度依存性について行い、超微細相互作用の温度依存性を求めた。
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今後の研究の推進方策 |
・Au-Al-Yb準結晶の近似結晶における量子臨界性とYb イオンと価数揺動とそのダイナミックスとの関係の解明 174Yb メスバウアー安定同位体を濃縮した準結晶試料での低温における174Yb 放射光メスバウアー・スペクトの詳細な測定を行う。1/1近似結晶の実験結果から得られた、Yb 電子状態との関係をもとに、価数揺動ダイナミックスを考慮し、準結晶でのYb 4f 電子状態の温度依存性を実験的に求める。価数揺動Yb 系準結晶中でのYb イオンの局所構造とその4f電子状態の関係を、補空間上で求められている類似性をもとに考察する。価数揺動Yb 系準結晶が示す量子臨界性と、Yb イオンの局所構造と4f 電子状態(価数揺動ダイナミックス)の関係を明らかにする。 ・準結晶が示す量子臨界性の外部変数応答の解明 準結晶及び1/1近似結晶での最低温での高圧力/磁場中174Yb 放射光メスバウアー分光測定を行う。量子臨界性のチューニング変数応答と、Yb イオンの4f 電子状態との関係を実験的に求める。 価数揺動Yb 系準結晶とその近似結晶の174Yb 放射光メスバウアー分光法から得られた、Yb 4f 電子状態の局所構造依存性から、補空間上でのそれらの相間を解明する。さらに、価数揺動Yb 系準結晶において観測されている量子臨界現象の外部変数(温度・圧力・磁場)応答とYb 4f電子状態の関係を明らかにし、量子臨界性の原因となる揺らぎを解明する。
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