研究領域 | 蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04607
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
清水 康司 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00838378)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 機械学習ポテンシャル / 第一原理計算 / 全固体電池 / イオンダイナミクス / 界面 |
研究実績の概要 |
本年度は、機械学習原子間ポテンシャル(ここではニューラルネットワークポテンシャルを使用)を用いて、硫化物固体電解質での解析を進め、下記の成果を得た。 (1)本研究で取り扱っている硫化物固体電解質は、アモルファス構造中において、低温ではパドルホイール機構によってリチウムイオンの移動が起こることが第一原理分子動力学計算による先行研究で報告されている。なお、パドルホイール機構は、複数のリチウムイオンが同時に移動し、それに合わせてリチウムイオンの周囲のアニオンの回転運動が伴う協調運動のことである。そこでまず、本研究で作成した機械学習原子間ポテンシャルを用いた分子動力学計算から、複数の計算条件(溶融温度・時間、冷却速度、スーパーセルサイズ)においてアモルファス構造を作成した。そして、これらの構造において室温での分子動力学計算を行ったところ、機械学習原子間ポテンシャルでもパドルホイール機構によるリチウムイオンの協調運動が起こることがわかった。このことから、本研究での機械学習原子間ポテンシャルは第一原理分子動力学計算に近いレベルでの予測が可能であることを確認できた。 (2)アモルファス構造の硫化物固体電解質は、アニーリング処理によって部分的に結晶化した際に、イオン伝導率が上昇するという実験結果がこれまで報告されている。そこで、その原子レベルでの起源を探るために、機械学習原子間ポテンシャルを用いてアモルファス構造を作成した。そして、そこから一定温度での分子動力学計算を長時間行うことで、部分的に結晶化した構造を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
機械学習原子間ポテンシャルを用いた分子動力学計算によってアモルファス構造中でのイオン挙動を解析し、第一原理分子動力学計算で報告されているリチウムイオンの協調運動を再現できることが確かめられた。さらに、アモルファスと結晶の界面構造の解析は、第一原理計算では計算コストの観点から非常に困難だが、本研究においてそのような構造を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度にアモルファス構造中でのイオン挙動の解析を行い、第一原理計算レベルの物理現象の予測が可能であることを示すことができた。しかし、上記の予測には一定の誤差が残っていることもわかったので、このような予測誤差の改善に取り組む。また、効率的な改善方法が見つかれば、他の機械学習原子間ポテンシャルの作成にも有用と考える。さらに、アモルファスと結晶の界面におけるイオン挙動の解析をさらに押し進め、実験で報告されているイオン伝導率の上昇につながる微視的要因を明らかにする。また、金属と固体電解質界面系への機械学習原子間ポテンシャルの適用にも取り組む。
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