研究実績の概要 |
本課題では,全固体電池のための固体電解質候補材料内部における種々の欠陥がイオン伝導に及ぼす影響を,分子動力学シミュレーションを用いて解明することを目的としており,具体的に次の2つの課題を設定している:(1)酸化物固体電解質内の粒界イオン伝導抵抗機構の解明,(2)硫化物ガラス・セラミックス内のイオン伝導抵抗機構の解明. 酸化物はLLTO(Li,La,Ti,Oの4元系),硫化物はLPS(Li,P,Sの3元系)を対象系として採用し,メタヒューリスティクスなパラメータ最適化手法を用いて,バルクにおけるLiイオン伝導度やイオン存在確率密度などが第一原理計算を再現する原子間ポテンシャルを構築した.その過程において汎用的なパラメータ最適化手法のプログラムを改良して公開した(optzer). 硫化物の結晶相がガラス相内部に存在するガラス・セラミックスの大規模構造モデルを作成し,Liイオンに外場を与えて駆動する非平衡分子動力学シミュレーションを行い,結晶・ガラス・界面のどこでどのようにLiイオンが伝導しているか解析を行った.ガラス相内におけるLiイオン伝導が全体のそれを決定することが明らかとなり,結晶相や結晶・ガラス界面におけるイオン伝導度の寄与は二次的であることが示された.また,ガラス相におけるSイオンネットワークのトポロジカル解析と局所Liイオン伝導解析結果をあわせることで,Sイオンネットワークが作る多面体のサイズと局所イオン伝導とに相関があることがわかった.これらの結果は新学術領域会議にて報告し,現在論文執筆中である.
|