研究領域 | 蓄電固体デバイスの創成に向けた界面イオンダイナミクスの科学 |
研究課題/領域番号 |
22H04617
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
間嶋 拓也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50515038)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | TOF-ERDA / ERDA / イオンビーム分析 / リチウムイオン電池 / 全固体電池 / 水素分析 / 深さ分析 / 薄膜 |
研究実績の概要 |
蓄電固体界面における特異なイオン輸送特性やイオン蓄積挙動のメカニズムを理解するための分析手法のひとつとして、MeVイオンビームを用いた弾性反跳粒子検出(ERDA)法を用いた界面近傍のLi濃度分布の直接測定がこれまで実現されてきた。さらに本新学術領域研究の第1期の公募研究において、元素弁別と深さ分解能の向上が実現できる飛行時間型(TOF-)ERDA 測定が可能なシステムを構築した。本研究では、構築したTOF-ERDA測定システムを本格的に稼働させ、その測定条件の最適化を進めながら、各種の蓄電固体材料に対する測定を進めている。 本年度は、本新学術領域研究で共通的に測定が進められている標準電池(Pt/LCO/LATP/FMO/Pt/Au)の薄膜試料のTOF-ERDA測定において、測定に用いるMeVイオンビームのイオン種やエネルギーを変えた測定を行い、最適なイオンビーム照射条件を決定した。また、透過型検出器に用いている薄膜やマイクロチャンネルプレート検出器の改良を行い、検出効率の向上を実現した。また新たな測定対象として、異なる電極/電解質界面のLi濃度分布の測定も開始し、界面近傍のLi濃度分布の変化の測定を進めた。また、通常のERDA測定も活用した薄膜試料中の水素濃度の測定も並行して行い、遷移金属酸化物薄膜中に各種の方法で導入した水素濃度の決定や、成膜条件に依存した不純物水素を含む多元素の深さ分析などの共同研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた入射イオンビームの照射条件の最適化や、本新学術領域研究内の他の研究者との複数の共同研究は予定通り進められた。透過型検出器の想定外の不具合が発生したため、計画していた内容のうち、膜厚を変化させた測定や、複数同時検出のリストモード測定が可能なマルチチャンネルアナライザーの組み込みが完了していないが、透過型検出器の修復の際に透過薄膜や検出器の性能を上げることができたため、結果的には検出効率の向上を達成することができた。また、計画していなかった新たな試料の測定も行ったため、一部進展したところもあり、全体としておおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
標準電池試料のTOF-ERDA測定については、膜厚を変化させた測定などを行い、Li分布の挙動についてさらに詳細な情報を得る。また、本年度に新たに開始した測定試料に対しても、試料の条件を変えながら、界面での反応の有無について、Li濃度の測定から解析を進める。また、システムの改良として残されている新たなマルチチャンネルアナライザーの導入を進め、バックグランドの低減をはかる。さらに、このシステムを用いて、充放電中のLi挙動の変化を連続的に測定することに挑む。また本年度に引き続いて、薄膜中の水素濃度の定量測定についても、試料の条件を変えながら測定を継続していく。
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