本年度はプラスチドボディー(PB)の液胞への輸送ルートの多様性の解析を中心に進めた。特に従来モデルであるオートファゴソームと液胞が直接融合するマクロオートファジーと、エンドソーム系と交差する新奇様式の関係性について注目した。PBが異常蓄積するgfs9-5変異体のLysotracker染色では、野生型では見られない肥大化した液胞前区画(PVC)と考えられるリング状構造体がPBを内包しつつ細胞内を移動する様子が観察された。またBCECF-AM染色では、野生型では液胞内腔のみが染色されたが、gfs9-5では液胞に加え、強い蛍光を持つ特異な小胞が観察された。gfs9-5におけるBCECF-AM陽性の小胞は、PBとは必ずしも共局在しないものの、高い頻度でLysotracker陽性のリング状構造体に内包されていた。各種エンドソーム系オルガネラマーカーとPBの局在性の解析では、PBとSYP32およびVTI12との明確な共局在性は確認されなかった。一方PBを内包するリング状構造体には、PVCマーカーであるRha1とRabG3fが局在することが分かった。これら2つのPVCマーカーとPBの共局在性の頻度には違いが見られ、PB を内包するRha1陽性のリング状構造体の数は、RabG3fの約2倍であった。VAMP711もリング状構造体に局在したが、VAMP711陽性のリング状構造体はPBを内包していなかった。以上より、プラスチドからオートファジーにより小胞として細胞質に切り出されたPBが、液胞と直接融合する経路に加えて、Rha1局在型のPVCの段階でエンドソーム系に合流する経路の存在が強く示唆された。
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