研究実績の概要 |
オートファジー必須遺伝子 ATG16L1 には、α, β, γ の3つのスプライスバリアントが存在する。α, β isoform は様々な組織に発現する一方で、γ isoform は主に脳や心臓に特異的に発現する。本研究では未解明である ATG16L1γ の産生機構や特徴的なタンパク機能、生体内における役割について検証した。2023 年度は isoform 産生メカニズムの解析と、in vivo における ATG16L1 isoform 機能解析を主に実施した。 (A) ATG16L1 選択的スプライシングを制御する因子の機能解析 アルギニンメチル基転移酵素 PRMT1 が ATG16L1 アイソフォーム産生制御に寄与することを見出し、その下流因子の探索に取り組んだ。培養細胞を用いた網羅的タンパク質間相互作用解析(BioID)、またマウス個体における in vivo BioID により、PRMT1 のメチル化基質として RNA 結合タンパク BCLAF1 を同定した。BCLAF1 欠損 Neuro2a 細胞を作製したところ、ATG16L1γ isoform の産生率が変化したことから、PRMT1-BCLAF1 経路が ATG16L1 isoform 産生に関与することが判明した。 (B) in vivo における ATG16L1 isoform タンパク分子機能の解明 β, γ isoform の S278 はリン酸化修飾を受け、β に比べ γ で亢進していることを見出し、ATG16L1γ 欠損マウス、ATG16L1-S278A 変異マウスの表現型解析を行った。その結果マウスの発育や、脳組織に異常は認められなかったが、ATG16L1-S278A 変異マウス脳では、LC3B 脂質化レベルが野生型マウスに比べ亢進していた。
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