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2022 年度 実績報告書

原生生物から見出される多様なATG12結合系の比較に基づくその作動原理の解明

公募研究

研究領域マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解
研究課題/領域番号 22H04633
研究機関千葉大学

研究代表者

坂本 寛和  千葉大学, 大学院医学研究院, 特任助教 (40724349)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワードATG12共有結合系 / 原生生物 / 多様性 / 分子進化
研究実績の概要

オートファジーの遂行に必須な2つのユビキチン様結合系、ATG8およびATG12結合系は全ての真核生物の系統に普遍的に保存されている。しかし、複数の原生生物系統ではATG12結合系に多様性がある。本研究では、ATG12結合系の多様性をより詳細に明らかにするとと もに、すでに明らかになっている’ATG12を欠損するATG12結合系’を持つ生物におけるATG12を代替するタンパク質の同定を目的としている。この代替タンパク質がどのようにATG12を模倣しているのかを分子レベルで明らかにする事で、ATG12として機能するために不可欠な特徴を明らかにする。
令和4年度は、'ATG12を欠損するATG12結合系’を持つ生物として着目したテトラヒメナを研究対象とし、エピトープタグ融合ATG5強制発現テトラヒメナ細胞を作出した。エピトープタグ抗体によるウェスタンブロットにより、ATG5が約15kDaのタンパク質と共有結合していることが実証され、免疫沈降産物のプロテオーム解析から、約15kDaの機能未知タンパク質を同定した。このタンパク質をクエリとした相同性検索からは既知のATG12ホモログはヒットしなかったが、ヒト培養細胞に強制発現させて検証した結果、このタンパク質は典型的なATG12と同様にATG10依存的にATG5と共有結合した。したがって我々は、この機能未知タンパク質をテトラヒメナATG12と結論づけた。
また、ATG12共有結合系に関与する5つのATG (ATG5, ATG7, ATG10, ATG12, ATG16)の全遺伝子を喪失した原生生物群を新たに見出した。これらの原生生物は、ATG8の脂質化反応に果たすATG12-5共有結合体の機能を解析するための新たな研究材料として有用であることが期待される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、ATG12が同定されなかった生物であるテトラヒメナから、実験的にATG5と共有結合する機能未知タンパク質を同定し、これをテトラヒメナATG12とした。また、ATG12共有結合系に関与する全てのATG遺伝子(ATG5, ATG7, ATG10, ATG12, ATG16)が同定されない原生生物群を見出すことにも成功した。これは、ATG12結合系の多様性のさらなる発見であり、ATG12結合系の機能解析やATG8の脂質化および局在制御機構の解析のための有用な研究材料となることが期待される。

今後の研究の推進方策

令和5年度は、令和4年度に同定したTtATG12タンパク質の機能解析を実施する。特に、TtATG12とTtATG5共有結合体のTtATG8に対するE3様酵素活性の確証、およびTtATG12のテトラヒメナ細胞におけるオートファジーに対する機能解析を実施する。現在、E3様活性を確証するための組換えタンパク質精製および、TtATG12をKOしたテトラヒメナ細胞を準備中である。また、TtATG12と典型的なATG12ホモログとの共通点を立体構造から抽出し、ATG12として機能するための普遍的な特徴を、TtATG12と出芽酵母Atg12のキメ ラATG12を用いて検証する計画である。
また、令和4年度に見出したATG12共有結合系をもたない原生生物のATG8結合系の解析を進める。特に、ATG12-5共有結合体によるE3様活性なしでもATG8脂質化が効率的に起こるのかを実験的に検証する。また、AlphaFoldによる立体構造予測および複合体予測をもとに、ATG8結合系の新たな反応機構の解析を計画している。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Evolutionary diversification of the autophagy-related ubiquitin-like conjugation systems2022

    • 著者名/発表者名
      Zhang Sidi、Yazaki Euki、Sakamoto Hirokazu、Yamamoto Hayashi、Mizushima Noboru
    • 雑誌名

      Autophagy

      巻: 18 ページ: 2969~2984

    • DOI

      10.1080/15548627.2022.2059168

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Development of a novel electroporation method for the oyster parasite Perkinsus marinus2022

    • 著者名/発表者名
      Sakamoto Hirokazu、Lin Xiaoxia X.、Bai Yun D.、Chen Xue F.、Zhang Ziyue Z.、Honjo Yui、Hikosaka Kenji
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 19996

    • DOI

      10.1038/s41598-022-24548-0

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] New PCR primers targeting the cytochrome b gene reveal diversity of Leucocytozoon lineages in an individual host2022

    • 著者名/発表者名
      Honjo Yui、Fukumoto Shinya、Sakamoto Hirokazu、Hikosaka Kenji
    • 雑誌名

      Parasitology Research

      巻: 121 ページ: 3313~3320

    • DOI

      10.1007/s00436-022-07667-5

    • 査読あり
  • [学会発表] 細胞質局在型ジヒドロオロト酸脱水素酵素遺伝子を導入したげっ歯類マラリア原虫のアトバコン耐性変異獲得様式の解析2023

    • 著者名/発表者名
      陳 雪, 新倉 保, 坂本寛和, 稲岡 健 ダニエル, 彦坂健児
    • 学会等名
      第92回日本寄生虫学会大会
  • [学会発表] Challenges in isolation of mitochondrial ribosomes from the malaria parasite2023

    • 著者名/発表者名
      Lin X Xiaoxia, Hirokazu Sakamoto, Rie Kubota, Yoh-Ichi Watanabe, Daniel Ken Inaoka, Naoaki Shinzawa, Kenji Hikosaka
    • 学会等名
      第92回日本寄生虫学会大会
  • [学会発表] Oroxylin A suppresses intracellular proliferation of Toxoplasma gondii by inhibiting phosphorylation of host cell ERK 1/22023

    • 著者名/発表者名
      Ziyue Z Zhang, Kazumi Norose, Hirokazu Sakamoto, Kenji Hikosaka
    • 学会等名
      第92回日本寄生虫学会大会
  • [学会発表] 寄生原虫がもつ非典型的オートファジー分子機構の解明2022

    • 著者名/発表者名
      坂本寛和、羅 君、野口愛音、彦坂健児
    • 学会等名
      第28回分子寄生虫学ワークショップ
  • [学会発表] 新規マラリア治療薬を目指したハイスループットスクリーニング法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      坂本寛和
    • 学会等名
      2022年スクリーニング学研究会プレカンファレンス
    • 招待講演
  • [学会発表] The ATG12 conjugation system without ATG122022

    • 著者名/発表者名
      Hirokazu Sakamoto, Aine Noguchi, Sidi Zhang, Kenji Hikosaka, Hayashi Yamamoto, Noboru Mizushima
    • 学会等名
      The 10th International Symposium on Autophagy
    • 国際学会
  • [学会発表] アピコンプレクサから見出されたオートファジー関連ユビキチン様タンパク質ATG12結合系の縮退進化2022

    • 著者名/発表者名
      坂本寛和、Yu Pang、山本 林、Joe Kimanthi Mutungi、Mayurbhai Himatbhai Sahani、北 潔、Honglin Jia、水島 昇
    • 学会等名
      第91回日本寄生虫学会
  • [学会発表] Oroxylin A, a compound extracted from Chinese medicinal herbs, suppresses Toxoplasma gondii proliferation2022

    • 著者名/発表者名
      張子月、坂本寛和、野呂瀬一美、彦坂健児
    • 学会等名
      第91回日本寄生虫学会

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公開日: 2023-12-25  

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