研究実績の概要 |
本研究では、オートリソソーム形成過程に焦点を当て、哺乳類マクロオートファジーにおけるオートファジー関連(ATG)タンパク質ATG8のホスファチジルエタノールアミン(PE)修飾(以下、ATG8-PEと示す)の機能を解明することを目的としている。今年度は、ATG8-PE化不全細胞でオートリソソーム形成が少ない理由が、リソソームの融合効率が低いためではないかという仮説を立て、これについて複数の繋留因子の関与を評価した。オートファゴソームとリソソームの融合を行うSNARE複合体を保持するための繋留因子として、HOPS複合体、EPG5, PLEKHM1, TECPR1など複数が知られている。これらの中には、アミノ酸配列内にATG8の哺乳類ホモログLC3との結合領域(LC3-interacting region, LIR)を持つものがあり、LIRを介したATG8-PEとの結合がオートファゴソームとリソソームの繋留に必要だと言われている。しかし、繋留因子はSTX17やRAB7などとの結合能ももつことから、ATG8-PEとの結合がリソソーム融合にどの程度寄与しているか、研究領域でも混乱があり、丁寧に整理する必要があった。そこで、野生型細胞とATG8-PE化不全細胞において、繋留因子群のオートファゴソームへのリクルート様式に違いがあるかどうかを調べた。その結果、ATG8-PE化不全細胞においてEPG5とPLEKHM1の局在に変化が見られた。続いて、両繋留因子の同時欠損細胞を作製したところ、オートリソソーム形成が抑制されていることが分かった。これらの結果から、ATG8-PE化不全細胞におけるオートリソソーム形成不全の理由は、繋留因子EPG5, PLEKHM1のリクルート不足によるリソソーム融合不全であることが示唆された。
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