研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
22H04638
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桑原 知樹 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (10533903)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | オートファジー / リソソーム / ATG結合系 / 神経変性 / LRRK2 |
研究実績の概要 |
ATG結合系の中核をなすATG12-5-16L1複合体はオートファジーとは独立に、LC3などのAtg8分子をリソソーム一重膜に結合させ、これはCASM(Conjugation of ATG8 to Single Membranes)とも呼称される。我々はこれまでにATG結合系がLRRK2のリソソーム一重膜への局在化にも関わることを見出していた。本年度は、このLRRK2局在化がオートファジーではなくCASMにより制御されているとの仮説を検証するため、オートファジー上流で機能するULK複合体構成因子の不必要性を確かめるとともに、CASMに特異的に関わるATG16L1-WD40ドメインの必要性について、英国の共同研究先から供与されたATG16L1-WD40欠損マウス由来の骨髄マクロファージを用いて解析を行った。結果はいずれもLRRK2局在化におけるCASMの関与を支持するものであった。さらにリソソーム膜のプロトンポンプV-ATPaseの関与も確かめられたことから、CASMの主要なメカニズムとして知られるV-ATPase-ATG16L1 axisがLRRK2を制御するものと結論づけた。 また、リソソームストレス下でのLRRK2の機能として我々が見出していたリソソームの形態調節と内容物放出についてそのメカニズムを解析し、CASMがこれらの表現型を制御することを明らかにした。神経変性との関連については、リソソーム内容物放出においてパーキンソン病の鍵因子αシヌクレインの細胞外放出にもこの機構が関わることを見出した。 以上の結果は前年度までのデータと合わせて論文として投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ATG結合系の非オートファジー機能がLRRK2の局在や活性化、機能を制御することをおおむね示すことができ、論文投稿に至った。αシヌクレインとの関連も見出された。
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今後の研究の推進方策 |
CASMがLRRK2を制御することは示されたものの、どのような機構でLRRK2を制御するのかが不明であり、論文改訂と平行してさらに解析を進める。また、神経変性における役割について、特にαシヌクレイン蓄積との関連をさらに詰める。
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