公募研究
NUT化合物処理による遺伝子の発現誘導をRT-qPCRで確認し、ATF3, NFIL3, PPP1R15A, GADD45Aなどの遺伝子がNUT化合物処理により、神経細胞においても発現が誘導されることを確認した。これら遺伝子のRNAi ノックダウン(KD)コンストラクトを作成し、NUT化合物によるアグリファジー誘導が影響されるかどうかを検証したところ、単独のノックアウトでは顕著なタウ凝集の抑制効果は観察されなかった。また、10種類のNUT化合物がもつ吸光と蛍光について、スペクトルスキャンをおこなったところ、薬効の強いNUT-29が蛍光をもつ化合物であることがわかり、NUT-29の蛍光を指標として濃度測定が可能となった。NUT化合物は疎水性がつよいことから、水溶液中に溶解できるNUT-29の濃度が最大でも10uM程度であることがわかった。NUT-29をオリーブオイルに溶解し、タウオパチーモデルマウスに2mg/kgの濃度で週3回、経口投与した。3ヶ月間の投与期間で、タウ凝集体の蓄積の有意な減少を確認できた。このことは、アグリファジー促進剤としてNUT化合物がマウス脳でも効果をもつことを示唆しており、タンパク質凝集体の蓄積は、神経細胞に本来備わっている分解機構を使いこなせていないことによることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
タウオパチーモデルマウスへのNUT-29投与実験で、タウ凝集体の抑制効果がみられたことは大きな進展であり、加齢によるタンパク質分解活性の低下は不可逆なものではないことが示唆され、想定通り凝集体分解ができることがわかってきた。
タウオパチーモデルだけでなく、シヌクレイノパチーモデルでもNUT化合物で分解ができることを確認することで、凝集体の種類によらないことを立証する。凝集体の分解システムの亢進のための新規メカニズムを、NUTの標的分子を同定しその作用機序を明らかにすることにより明らかにしていく。
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Aging Cell
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