研究領域 | マルチモードオートファジー:多彩な経路と選択性が織り成す自己分解系の理解 |
研究課題/領域番号 |
22H04652
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
谷田 以誠 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (30296868)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カテプシン / 神経変性 / オートファジー / タンパク質分解 / p62 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
オートファジー・リソソーム分解系の研究においては、“リソソームによる分解”はどのマルチモードオートファジーにおいても避けられない“分解”を司る必須の過程である。しかしながら、“リソソームによる分解の多様性・マルチモード”についてはほとんど研究が進んでいない。当該研究室はリソソームの主要タンパク質分解酵素、カテプシンD(CtsD), カテプシンB(CtsB), およびカテプシンL(CtsL)について、脳組織における機能について研究している。CtsDは神経セロイドリポフスチン症の原因遺伝子の一つCLN10であり、CtsDノックアウトマウスは神経セロイドリポフスチン症様の表現型を示す。興味深いことにCtsB/ CtsL二重ノックアウトマウスにおいても類似した表現型を示した。そこで我々は“中枢神経組織のオートファジー・リソソーム分解系のカテプシン群が果たす分解機能には、それぞれの脳領域・分化時期についての多様性・マルチモードが存在しているのではないか?”と言う問いから“中枢神経特異的CtsB/CtsL二重ノックアウトマウスの神経変性を起こす時期、変性する脳領域が全身CtsB/CtsL二重ノックアウトマウスや中枢神経系特異的CtsDノックアウトマウスと比較してどう異なるだろうか?”という点を明らかにしたい。本申請研究は、中枢神経組織における、オートファジー・リソソーム分解系について、リソソームの主要タンパク質分解酵素、カテプシン群、の果たす多様性について解析を行うものであり、当該領域の研究に“リソソームが果たす神経におけるマルチモードオートファジー”研究という新たな視点に立った研究として貢献できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中枢神経特異的CtsB/CtsL二重ノックアウトマウスを作成し以下の解析を行っている。 【項目1】中枢神経特異的CtsB/CtsL二重ノックアウトマウスの表現型解析: 全身CtsB/CtsL二重ノックアウトマウスは10日前後から、痙攣などの神経症状が認められ、生後約14日前後で死亡するが、中枢神経特異的CtsB/CtsL二重ノックアウトマウスでは胎生15日前後から遺伝子のノックアウトが進行するため、生後20日を過ぎても生存する可能性もある。このことから、10日齢、20日齢前後を一つの目処として、体重変化をモニターしながら、神経所見を注意深く観察し、特に症状が顕著に見られない場合は、脳が成熟する8週齢を一つの目処として、表現型解析を継続し、その後、組織学的解析、超微形態学的解析を行っている。 【項目2】中枢神経特異的CtsB/CtsL二重ノックアウトマウス脳における組織学的解析: 脳組織におけるリポフスチン顆粒の蓄積の有無、神経細胞の滑落、ユビキチン陽性凝集体、オートファジー関連因子p62, LC3, Nbr1陽性のシグナルの増加について組織学的解析をおこなっている。 【項目3】中枢神経特異的CtsB/CtsL二重ノックアウトマウス脳における超微形態解析: 異常なオートファゴソームやオートファジー関連構造体、リソソーム内に分解できない異常タンパク質が蓄積した構造体、GROD、の蓄積について、電子顕微鏡による超微形態解析をおこなっている。 当初、目的の中枢神経特異的CtsB/CtsL二重ノックアウトマウス(CtsBflox/flox: CtsLflox/flox: Nestin-Creマウス)が繁殖せずに個体数を増やすことができなかったが、その問題も解決でき、順調に解析が進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後も実験計画に従って研究を推進する。 (1) 中枢神経特異的CtsB/CtsL二重ノックアウトマウスの表現型解析:中枢神経特異的CtsB/CtsL二重ノックアウトマウスにおける行動解析、運動機能解析を継続する。 (2)中枢神経特異的CtsB/CtsL二重ノックアウトマウス脳における組織学的解析:組織におけるリポフスチン顆粒の蓄積の有無、神経細胞の滑落、ユビキチン陽性凝集体、オートファジー関連因子p62, LC3, Nbr1陽性のシグナルの増加などの経時変化に注目して解析をおこなう。 (3)中枢神経特異的CtsB/CtsL二重ノックアウトマウス脳における超微形態解析:特に神経変性を起こしている領域での神経細胞、ミクログリア、アストロサイト、及びそれら細胞のオルガネラの形態変化、GRODなどに注目して、解析をおこなう。
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備考 |
研究機関によるプレスリリース
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