オートファジー関連(Atg)タンパク質を中心としたマクロオートファジーの分子機構が明らかになりつつある一方で、Atgタンパク質とミクロオートファジーの関係は不明なままである。我々はマクロオートファジー不全出芽酵母細胞では静止期ミクロリポファジーに必須なステロール輸送タンパク質Ncr1(液胞膜貫通タンパク質)とNpc2(液胞内腔タンパク質)が、液胞近傍のドット様構造に異常集積してしまうこと、またその原因が培地中に蓄積した代謝産物であることを見出した。興味深いことに代謝産物濃度を低下させることで速やかに異常局在は解消され、Ncr1とNpc2は正常な分布に戻った。この結果から、代謝産物濃度さえ正常であればミクロリポファジーが起こりうること、すなわちatg遺伝子欠損は代謝異常を介してミクロリポファジー不全を引き起こしているという仮説をたてた。本研究ではこの仮説を検証するとともに、マクロとミクロの異なる2つのオートファジー経路の関係を明らかにする。 本年度は培地中の代謝産物濃度に依存して静止期ミクロリポファジーが阻害されるかどうかを調べた。まず静止期ミクロリポファジーに必要な液胞膜ミクロドメイン形成が代謝産物濃度に依存しているかどうかを調べた。atg7欠損細胞を蒸留水で洗浄することで、液胞膜ミクロドメインが形成されることを確認した。次に、静止期に入る前の野生型酵母の培地に代謝産物を添加し静止期まで培養したところ、静止期ミクロオートファジーは阻害され、液胞内に脂肪滴は取り込まれなかった。この状態から代謝産物濃度の低い培地に戻し24時間培養したところ、静止期ミクロリポファジーが誘導された。同じことがatg7欠損細胞でも確認できた。これらの結果からAtgタンパク質は代謝制御を介してミクロオートファジーに関わっていることがわかった。
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