公募研究
本研究では、インスリン分泌顆粒( Insulin Secretory Granules; ISG)の膵β細胞内分解機構を解明しその病態生理学的意義を明らかにすることを目指した。はじめに、アミノ酸・グルコース飢餓刺激によって誘導されるISG分解を評価する蛍光レポーターを作製した。CRISPR/Cas9システムによりオートファジー関連遺伝子のノックアウト細胞を作製し、主要なマクロオートファジー制御機構がISG分解に関与しないことを示した。さらに、ゲノムワイドgRNAを用いた遺伝子スクリーニングを実施し、同定された遺伝子群にはマクロオートファジーの制御経路が含まれないことが明らかとなった。これらの結果を論文として発表する一方(Kanai A. et al. BBRC, 2023)、さらに解析を進めるべく2つの検討を行った。ひとつは、超解像顕微鏡を用いたISG分解のリアルタイム観察であり、ZEISS社製のライトシート顕微鏡を用いてISG下流およびリソソームの挙動を長時間観察することに成功した。もうひとつは、飢餓刺激ではない定常状態のISG分解の評価系の作製である。具体的には、インスリン分子に酸性化環境に耐性の蛍光タンパクであるVenusを結合させたInsulin-Venusを、Tet-Onシステムで発現させる膵β細胞株を作製した。この細胞では、Tet-OnからOffにすることで、ISG分解が誘導されてVenusによる蛍光が消失すること、その消失がリソソームプロテアーゼ阻害薬により阻害されることを示した。今後は、これらのツールを用いて定常的なISG分解の制御機構に関する検討へと研究を展開させることを企図している。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 676 ページ: 132~140
10.1016/j.bbrc.2023.07.040