真核細胞の機能を支えるオルガネラの量と質は厳密に制御されている必要がある。リン脂質二重膜を始めとする構成要素の合成、統合、形態形成、質の監視を含む品質管理、構成要素毎あるいは一括しての分解など多段階の制御が想定される。この一部について現在、盛んに解析が行われているが、プロセス全体の十分な理解からは未だほど遠い。研究代表者は脳血管疾患もやもや病の責任遺伝子として新規遺伝子ミステリン(別名RNF213)をクローニングした。ユニークなダイニン型ATPアーゼ/ユビキチンリガーゼであるミステリンタンパク質は、細胞質ゾル、脂肪滴、細胞に侵入した感染性細菌の膜表面などへの特異的な局在性を示す。ミステリンは外来性の膜(感染性細菌)をユビキチン化して、膜ユビキチン化を起点としたオートファジーにより外来性膜を量的に下方制御することから、翻ってミステリンが脂肪滴など内在性膜の量や質の調節においても機能を持つ可能性が考えられた。今年度までの解析により、ミステリンが特定の条件下で内在性膜のオートファジーに寄与すること、またもやもや病や関連の血管狭窄と相関する患者由来変異によりこのプロセスに障害を生じることを見出した。他方このメカニズムについては必ずしも明確でなく、ミステリンが外来性あるいは内在性の膜を特異的に見分けるメカニズムや、オートファジーを惹起する場合とそうでない場合の切り替えのメカニズム、血管狭窄関連変異による障害のメカニズムなどについて引き続き解析を進めている。
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