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マウス2細胞期胚の割球は等価でともに全能性を持つか?という問題は長年において議論の的となり、実験的に検証されてきた。しかし、その検証実験の対象はE3.5相当の初期胚盤胞における内部細胞塊の位置や胎盤原基である栄養外胚葉への分化のバイアスがあるか否かであった。 本研究課題代表者はこれまでに、マウス胚2細胞期の割球を異なる蛍光でラベルし、その後の発生過程におけるそれぞれの娘細胞の動態を追ってきた。in vivoで発生した場合は2細胞期の両割球がE4.5相当の後期胚盤胞のエピブラストを含めた全ての組織に寄与するのに対し、in vitroで発生した場合では2細胞期の割球は胚体外組織については両割球が寄与するものの、エピブラストではどちらか片割球由来の細胞のみが寄与することを発見した。古典的な発生生物学的実験から、マウスの2細胞期胚の割球を分離しても、それぞれが後期胚盤胞まで発生しエピブラストを形成することから、in vitroでは2細胞期の片割球のみが全能性を失う「割球間競合」が起きていることが示唆された。また、in vivoにおいても2細胞期の片割球のみがエピブラストに寄与する系を確立し、その出生に至るまでの発生率を検証したところ、コントロールに比べて著しく低下することを見出した。この結果は哺乳類の効率的な発生にはエピブラストが両割球由来である方が望ましく、母体内では割球間競合を抑制していることを示唆している。これらの結果から母体内では割球間競合が起こらないように抑制し、2細胞期胚の両割球が胚体部に寄与することで効率的な個体発生を実現するメカニズムの存在が示唆された。
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