• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実績報告書

受精卵が全能性を維持するため に染色体分配異常から回復する メカニズムの解明

公募研究

研究領域全能性プログラム:デコーディングからデザインへ
研究課題/領域番号 22H04674
研究機関神戸大学

研究代表者

京極 博久  神戸大学, 農学研究科, 助教 (20726038)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワード全能性 / 受精卵 / 初期胚 / 染色体分配異常 / 片親性ダイソミー
研究実績の概要

全能性を持つ受精卵は,卵子と精子が接合(受精)することで生じる初期発生におけるスタートの細胞である。しかしながら,卵子は減数分裂過程で染色体分配異常を起こしやすく染色体数異常を持った卵子が多いことはよく知られており,これは,受精後の全能性獲得において大きなリスクである。そこで,申請者は受精卵が初期発生の過程で染色体分配異常から回復する何らかのメカニズムがあるのではないかと考え実験を計画した。まず,受精卵および2細胞期胚の正確な染色体分配異常頻度の解析を行った。具体的には,受精卵および2細胞期胚を用いて,シングルセル(割球)によるDNAのコピー数解析(scRepli-seq)を行った。遺伝的に離れた2系統,C57BL/6とMSM/Msマウスの精子と卵子を用いて受精卵を作成し実験に用いた。さらに顕微操作により,雌雄の前核を抜き出し、scRepli-seq を行うことで系統による影響も確認した。NGSデータの解析により,受精卵の約10%が卵子由来の染色体分配異常を持っていること,一方で,2細胞期胚では,染色体分配異常のほとんどが片方の割球にのみ見られ,もう一方の割球は正常になっていることが明らかとなった。
回復メカニズムとして余剰になった染色体が微小核を形成し、第一卵割時に紡錘体外にあることで異常から回復している様子がライブセルイメージングにより観察された。
これらの結果は,2細胞期胚では割球のペアで染色体の状態が異なっており,2細胞期になる際に,片方の割球に異常を集めることで,もう一方の割球は正常な染色体を持ち全能性を維持するメカニズムの存在を示唆している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

基盤となる染色体分配異常頻度と異常からの回復を示唆するデータに関しては,順調に取得できた。
まだ、データは少ないが、微小核による異常から回復の様子も観察した。

今後の研究の推進方策

データから片親性ダイソミーが起こっている可能性が示唆されたが、どのようにして雌雄の前核がお互いの染色体数を認識しているのかは、仮説が少なく検討が困難な可能性がある。
受精卵の紡錘体はDual spindleと呼ばれる雌雄2つの紡錘体を雌雄前核が並んでいた軸に対して垂直方向に形成し融合するという受精卵特有の紡錘体形成システムがある(Reichmann et al., Science. 2018; Schneider et al., JCB. 2021)。しかし,これらの生物学的意味は未だに分かっておらず,アクチン阻害剤(Cytochalasin B)によって形成する軸を,キネシン阻害剤(Monastrol)と微小管阻害剤(Nocodazole)によってDual spindleの形成を阻害することが可能であるが発生には影響しないと言われている。そこで,これらの受精卵特異的な紡錘体形成メカニズムが異常な染色体を認識するための機能のひとつと考え,阻害剤によりDual spindleの形成軸や形成そのものを阻害し,ライブセルイメージングおよびscRepli-seqによる詳細な染色体分配異常の解析を行うことで,これらのメカニズムを解明する足掛かりとする。
異常のある受精卵や異常から回復した2細胞期胚の割球がminor ZGAやMajor ZGAを正しく起こし全能性を獲得しているのかをNGSベースの手法で解析する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2023

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] The source of chromosome abnormalities in early embryos2023

    • 著者名/発表者名
      京極 博久
    • 学会等名
      BDR symposium 2023
    • 国際学会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi