本研究提案の研究目的は転写因子DUX非依存的な胚性ゲノム活性化機構を解明することである。これまで、転写制御因子Ctbp1/2をES細胞で2重破壊 (DKO)することで、DUX非依存的に2細胞期後期で活性化される遺伝子群が活性化されることを突き止めていた。このCtbp1/2 DKO ES細胞における2細胞期後期遺伝子の発現をモニターするために、まず、既存2CLCのマーカーであるMERVLの発現を赤色蛍光であるtdTomatoでモニターするレポーターES細胞を樹立した。この細胞を用いて、現在、2細胞期後期に発現するCrxosの発現をモニターするeGFPノックイン細胞を樹立している。 またDUXは有胎盤類特異的な転写因子のため、そこで胎盤を持たない有尾両生類であるイベリアトゲイモリにおける胚性ゲノム活性化機構の解明を通してDUX非依存的な胚性ゲノム活性化機構の解明も目指している。哺乳類の多能性制御転写因子Prdm14のイモリオーソログのノックダウン実験を行った結果、神経胚の初期で発生が停止することを突き止めた。また、Prdm14ノックダウン胚における遺伝子発現変化を解析したところ、胚性ゲノム活性化によって活性化される一部の遺伝子の発現上昇が減弱しており、その中には、Sox3やKlf2などの多能性制御因子が含まれていた。特にSox3は胚性ゲノム活性化が起こる前に転写がスタートすることから、母性因子Prdm14がSox3の活性化を介して胚性ゲノム活性化を制御している可能性が考えられる。
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