研究実績の概要 |
線状染色体末端のテロメアに隣接するドメインであるサブテロメアは、長大な重複配列が存在すること等による実験手法的困難から、その機能がほとんど明らかにされてこなかった“染色体の未開の地”である。これまでに申請者らは、分裂酵母のセントロメアタンパク質Sgo2が細胞周期の間期にサブテロメアにリクルートされ、サブテロメア特異的なKnobと呼ばれる凝縮クロマチン構造の形成を誘導することを発見した。しかし、Sgo2がどのようにしてサブテロメアにリクルートされ、どのようにKnobが形成されるのか不明であった。本研究において、Sgo2のサブテロメア局在には、ヒストンH2AS121のリン酸化だけでは十分ではなく、ヒストンH4K5, H4K12の脱アセチル化やヒストンH3K36のメチル化も重要であることを明らかにした。さらに、ヒストンH4K5, H4K12の脱アセチル化を行う酵素サブユニットであるNts1は間期特異的にサブテロメアに局在し、その局在はSgo2によって安定に維持されることも明らかになった。 一方、ヒトに進化的に最も近い大型類人猿は、ヒトとは大きく異なる染色体末端構造をもち、StSatと呼ばれる巨大な繰り返し配列がテロメアとサブテロメアの間に存在する。StSatもKnobと同様に高度に凝縮したクロマチン構造を形成することが示唆されているが、その形成機構や機能は不明であった。本研究において、StSat領域ではH3K9メチル化が高度に見られるヘテロクロマチンが形成されていることが明らかになった。
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