研究領域 | 多様かつ堅牢な細胞形質を支える非ゲノム情報複製機構 |
研究課題/領域番号 |
22H04704
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
立和名 博昭 公益財団法人がん研究会, がん研究所 がん生物部, 研究員 (70546382)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 遺伝子発現 / エピジェネティクス / クロマチン |
研究実績の概要 |
乳がんは女性で最も罹患率の高いがんで、その中でもエストロゲン受容体(ER)陽性型は全乳がんの約70%を占める。ER 陽性乳がんはER に依存して増殖するため、ER をコードするESR1 遺伝子の転写制御機構の解明は重要である。しかし、ESR1 遺伝子の転写制御機構は明らかとなっていない。本研究ではESR1遺伝子の転写がヒストンのアセチル化レベルを亢進させるヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害により抑制されるメカニズムの解析から、ESR1 遺伝子の転写制御機構の解明を試みている。まず、ER陽性乳がん細胞において、ESR1遺伝子と同様にヒストン脱アセチル化酵素阻害剤により、転写が抑制される遺伝子群の同定を行い、共通する特徴を見出すことを次世代シーケンサーを用いたtotalRNA-seqにより試みた。その結果、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を添加してすみやかに転写が抑制される約50遺伝子を同定した。そして、これらの遺伝子に共通する特徴として、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害依存的にH2A.Z の局在がgene body上に増えることを見出した。2022年度は転写が抑制されるメカニズムを明らかにするために、RNAポリメラーゼII の結合がヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤によりどう変化するのかをクロマチン免疫沈降法により解析した。その結果、ヒストン脱アセチル化酵素の阻害により転写が抑制される遺伝子において、RNAポリメラーゼII の転写伸長は阻害されておらず、プロモーターへの結合が阻害されていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
転写が抑制される段階を同定した。次にヒストン脱アセチル化酵素の阻害により、RNAポリメラーゼII のプロモーターへの結合が起きなくなるメカニズムを明らかにすることができるため。
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今後の研究の推進方策 |
ヒストン脱アセチル化酵素の阻害によりプロモーターの構造が変化していることが考えられる。そこで、ATAC-seqによりヌクレオソームの形成を解析する。さらに、4C-seq によりクロマチン間の相互作用の変化を解析する。また、基本転写因子の結合が阻害されているかどうかを確認を行う。
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