種子植物は細胞分裂を繰り返して発生・成長をする。発生・成長に際しては、細胞極性や体軸の構築が重要であるが、種子植物では、オーキシンが組織中を一方向に極性輸送されることで、体軸が構築される。また、そのオーキシンの流路は細胞において偏在するオーキシン排出トランスポーターPINにより決定される。PINは細胞分裂直後、一過的に誤った部位に局在するが、その後、その偏在が再構築される。すなわち、細胞分裂を通して、繰り返し周期的に偏在が再構築される。以上のような発生・成長に加え、植物は新たな器官を構築する過程や、光・重力環境応答の際にオーキシンの流路が変化する。本研究では、これらの様式をオーキシン流路形成の周期性と変調と捉え、それぞれを制御するメカニズムの解析を行った。周期性に関しては、細胞分裂時のPINの挙動について詳細な解析を行ったところ、PINが細胞分裂期に多量体様のクラスター構造を周期的に形成することが明らかになった。このクラスター構造は、細胞分裂直後には形成されないが、細胞分裂後しばらくすると、クラスターが再構築されることが明らかになった。また、このクラスター構造は、オーキシン濃度の変化に伴い、動的に形成が制御される可能性が示唆された。変調に関しては、オーキシン流路が変化する起点となる細胞において発現する遺伝子探索をレーザーマイクロダイセクションにより行った。しかしながら、細胞の単離の効率が悪く、十分な量のRNAを抽出することができなかった。今後、1細胞解析を行うことで、この問題点を解決し、オーキシン流路の変調メカニズムを明らかにしていきたい。
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