研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
22H04709
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
笹部 美知子 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (00454380)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 分化 / 葉形成 / 核内顆粒 / 細胞分裂 / 染色体構造 |
研究実績の概要 |
葉の分化過程を制御しているシロイヌナズナのASYMMETRIC LEAVES2 (AS2)タンパク質は、発生段階や細胞周期に依存して核内で迅速に顆粒状の集合体 (AS2 body) を形成すると同時に、M期には染色体が分離する際に染色体と共に両極に移動し、二つの娘細胞に分配される。AS2 bodyの形成はAS2の葉形成における機能に必要であることが明らかになってきたが、その分子機能については未だ明らかになっていない。本研究では、AS2 bodyの構成成分を明らかにすることによって、AS2 bodyの形成と分配の分子メカニズム及びAS2の分子機能の解明を目指している。本年度は以下の研究を行った。 1)複数の方法でAS2の相互作用因子の探索を進めているが、酵母2ハイブリッドスクリーニング及び、培養細胞を用いた免疫沈殿法により得られた相互作用候補因子について、一過的発現系を用いて細胞内局在を観察したところ、いくつかの候補因子がAS2タンパク質と核において共局在することが示された。 2) AS2-YFP融合タンパク質は、葉原基の表側の分裂期の細胞で分裂後期から終期にかけて染色体が分離する際に染色体間をつなぐブリッジ様の構造として観察される。これらの構造体について、これまでに報告されているブリッジ様の構造体であるanaphase bridgeやUltra-fine DNA Bridge (UFB)との関連性について調べた。動物細胞で知られている複数のUFB局在タンパク質のシロイヌナズナホモログに着目し、一過的発現系を用いた細胞内局在の観察を行ったところ、AS2が局在する核及び核小体局在を示すものがあることが分かった。今後、分裂期における細胞内局在及びAS2との共局在について解析を進め、AS2がこれら因子と物理的、機能的に相互作用している可能性について検証していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
AS2タンパク質の分裂期の挙動について細胞レベルで詳細に解析し、分裂期に両娘細胞に分配されるだけでなく染色体間に明確な構造体を形成することが明らかとなった。このような構造体はこれまでにもまれに観察されていたが組換えタンパク質を作成する際のタグの種類や、阻害剤処理により形成頻度や維持される頻度が変わることが明らかとなり、何らかの機能を有している可能性が示唆される結果が得られた。また、AS2 bodyの実体を明らかにするために相互作用因子の解析を進めているが、今年度までにいくつかの候補因子を絞ることができたので、今後、それらとの物理的、機能的相互作用を解析していく予定である。また、相互作用因子の解析については、in vivoにおける相互作用因子の同定を目指して近接依存性標識法を試みている。これらについて、条件検討に時間がかかりやや遅れているが、実際の解析に入るところまで準備が進んだので今後計画通り解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1. AS2 タンパク質の相互作用候補因子の中で、核局在する因子についてAS2との相互作用の有無をBiFC、Pull down assayにより確認を進める。また、AS2相互作用因子の同定のために上記した方法と同時に進めていた近接依存性標識法によるAS2の相互作用因子について、質量分析及びデータ解析を進める。 2. AS2タンパク質は分裂期には染色体間をつなぐような特殊な構造体を形成する。この構造体に共局在するタンパク質の存在の有無及びこの構造体に核酸が含まれているか否かを確認し、この構造体の実体と機能について解析を進める。
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