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2022 年度 実績報告書

植物の発生における細胞増殖の周期と変調を司る転写制御機構

公募研究

研究領域細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生
研究課題/領域番号 22H04714
研究機関金沢大学

研究代表者

伊藤 正樹  金沢大学, 生命理工学系, 教授 (10242851)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワード細胞周期 / 細胞増殖 / シロイヌナズナ / 細胞サイズ / プラスチド / 転写制御
研究実績の概要

DREAM complexはE2FとMYB3Rを同時に含むタンパク質複合体であり、広範囲の細胞周期遺伝子の転写を制御していることを明らかにしている。DREAM構成因子の1つをコードするTCXファミリーには、気孔前駆細胞に特異的なSOL1とSOL2が存在している。sol1,2二重変異体では気孔前駆細胞に過剰な細胞分裂が生じるが、この異常がR2R3型Myb転写因子FLPの変異体とよく似ていることから、これらが組織特異的なDREAM様複合体を形成しいるのではないかという仮説を立てている。FLPと機能重複するMYB88の変異を加えたsol1,2 flp myb88四重変異体では過剰分裂が強く促進されることから、SOL1/2とFLPが密接に関連して機能していることが改めて示唆された。また、DREAM構成因子の変異を組み合わせた多重変異体の解析から、sol1,2とflpの表現型は複数の因子により同様の影響を受けることがわかった。さらに、BiFCのシステムを用いて、植物細胞内でのタンパク質間相互作用を調べたところ、SOL1とFLPの間の相互作用だけではなく、双方ともに複数のDREAM構成因子と相互作用することがわかった。
細胞サイズ制御因子SCL28については、SCL28を過剰発現するシロイヌナズナを用いて、気孔や初期胚など多くの細胞型、組織において細胞サイズを解析した結果、調べた全ての細胞においてSCL28を過剰発現させるとサイズが拡大することが示された。また、EdU取り込みを利用した細胞周期の解析より、scl28変異体やSCL28標的遺伝子smrの変異体ではG2期が短縮すること、SMR過剰発現体ではG2期延長することから、SCL28がSMRの発現制御を介してG2期をコントロールすることで細胞サイズに影響する仕組みが改めて強く支持された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

DREAM complexを構成するTCXと同じファミリーに属するSOL1/2が組織特異的なDREAM様複合体を形成している可能性を提案している。表現型の類似性からSOL1/2とFLPが共通の組織特異的複合体を形成している可能性がある。昨年度までの研究により、sol1/2とflpが相互に表現型を相乗的に促進することを明らかにしたが、2022年度の研究からDREAM complexを構成する複数の因子の変異が、sol1 sol2とflpの表現型に同様に影響することが明らかになった。つまり、MYB3Rを初めとしたいくつかのDREAM構成因子の変異が表現型を促進した一方、E2Fの変異により異常が回復することが示された。これらの結果は、SOL1/2とFLPの機能が相互に密接に関連しているだけでなく、双方がDREAM complexの構成因子とも関連していることを示唆している。また、これまで、免疫沈降と質量分析を用いた複合体タンパク質のプロテオーム解析を行なってきたが、FLPやSOL1/2がDREAM構成因子と複合体を形成している明確な証拠を得ることはできなかった。しかし、2022年度に行なったBiFCを用いた実験から、FLPとSOL1/2が植物細胞内で、物理的に相互作用している可能性が示された。この実験結果だけからは結論することはできないが、今後の研究を進める上で大きな前進となった。DREAM complexに類似したサブユニット構成を持つ組織特異的な複合体は、ショウジョウバエの精巣特異的な複合体tMACの一例が知られるだけであり、本研究の成果はProof of conceptの観点から重要な価値を持つものである。

今後の研究の推進方策

DREAM complexのサブユニットとして、TCXファミリーのタンパク質が知られている。このファミリーの因子のうち、SOL1/2がDREAM complexと類似した構造の組織特異的な複合体を形成しているという仮説を立てており、この仮説の検証に向けて免疫沈降と質量分析を組み合わせた生化学的な実験を行う。具体的には、目的タンパク質の検出感度を高めるため以下の方策をとる。(1) SOL1-GFPやFLP-GFPを発現するコンストラクトを、気孔前駆細胞が大幅に増加する変異体scrm-Dに導入し、抗GFP抗体を用いた免疫沈降を行う。(2) 近位標識法(Proximity Labelling)を用いた方法を導入する。SOL1やFLPをTurboIDとの融合タンパク質として発現するシロイヌナズナを作出し、ビオチン化反応の後、ストレプトアビジンを用いたアフィニティ精製を行う。このようにして精製し複合体を質量分析により解析し、含有されるタンパク質の同定を行う。
細胞サイズ制御に重要なGRAS型転写因子SCLは、核とプラスチドの両方に局在するという興味深い性質を持っている。SCLのプラスチド局在の意義を明らかにするため種々の角度から研究を行う。また、SCLには全ての陸上植物にオルソログが存在することがわかっている。SCLによる細胞サイズ制御の進化的な背景を調べるため、モデルコケ植物である、ゼニゴケやヒメツリガネゴケにおけるSCLオルソログの細胞内局在や変異体の表現型解析を行う。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (8件) 備考 (2件)

  • [国際共同研究] Royal Holloway University of London(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      Royal Holloway University of London
  • [国際共同研究] Biological Research Centre(ハンガリー)

    • 国名
      ハンガリー
    • 外国機関名
      Biological Research Centre
  • [国際共同研究] University of Hamburg(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      University of Hamburg
  • [国際共同研究] Institute of Plant Sciences Paris Saclay(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      Institute of Plant Sciences Paris Saclay
  • [雑誌論文] KNO1‐mediated autophagic degradation of the Bloom syndrome complex component RMI1 promotes homologous recombination2023

    • 著者名/発表者名
      Chen Poyu、De Winne Nancy、De Jaeger Geert、Ito Masaki、Heese Maren、Schnittger Arp
    • 雑誌名

      The EMBO Journal

      巻: e111980 ページ: -

    • DOI

      10.15252/embj.2022111980

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] At the Nexus between Cytoskeleton and Vacuole: How Plant Cytoskeletons Govern the Dynamics of Large Vacuoles2023

    • 著者名/発表者名
      Takatsuka Hirotomo、Higaki Takumi、Ito Masaki
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 24 ページ: 4143~4143

    • DOI

      10.3390/ijms24044143

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Members of SIAMESE-RELATED Class Inhibitor Proteins of Cyclin-Dependent Kinase Retard G2 Progression and Increase Cell Size in Arabidopsis thaliana2022

    • 著者名/発表者名
      Yamada Kesuke J.、Takatsuka Hirotomo、Hirota Junya、Mineta Keto、Nomoto Yuji、Ito Masaki
    • 雑誌名

      Life

      巻: 12 ページ: 1356~1356

    • DOI

      10.3390/life12091356

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Genome editing of <i>SlMYB3R3</i>, a cell cycle transcription factor gene of tomato, induces elongated fruit shape2022

    • 著者名/発表者名
      Zheng Qingyou、Takei-Hoshi Rie、Okumura Hitomi、Ito Masaki、Kawaguchi Kohei、Otagaki Shungo、Matsumoto Shogo、Luo Zhengrong、Zhang Qinglin、Shiratake Katsuhiro
    • 雑誌名

      Journal of Experimental Botany

      巻: 73 ページ: 7312~7325

    • DOI

      10.1093/jxb/erac352

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] MYB3R-SCL28-SMR module with a role in cell size control negatively regulates G2 progression in <i>Arabidopsis</i>2022

    • 著者名/発表者名
      Takatsuka Hirotomo、Nomoto Yuji、Yamada Kesuke、Mineta Keito、Breuer Christian、Ishida Takashi、Yamagami Ayumi、Sugimoto Keiko、Nakano Takeshi、Ito Masaki
    • 雑誌名

      Plant Signaling &amp; Behavior

      巻: e2153209 ページ: 1~5

    • DOI

      10.1080/15592324.2022.2153209

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 植物の細胞サイズを制御する転写因子SCL282022

    • 著者名/発表者名
      野本 友司、伊藤 正樹
    • 雑誌名

      バイオサイエンスとインダストリー

      巻: 80 ページ: 458-459

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 植物細胞のサイズ決定に関わる転写因子SCL28のはたらき2022

    • 著者名/発表者名
      野本 友司、山田 圭介、高塚 大知、伊藤 正樹
    • 雑誌名

      バイオサイエンスとインダストリー

      巻: 80 ページ: 483-485

    • 査読あり
  • [学会発表] KNO1-mediated autophagic degradation of the Bloom component RMI1 promotes homologous recombination2023

    • 著者名/発表者名
      Poyu Chen, Masaki Ito, Arp Schnittger
    • 学会等名
      第64回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] シロイヌナズナの葉の発生分化に関わるAS2と核小体タンパク質によるDNAメチル化維持機能の解明2023

    • 著者名/発表者名
      小島 晶子,岩川 秀和,日比野 哲紀,高橋 広夫,安藤 沙友里,笹部 美知子,伊藤 正樹,町田 泰則, 町田 千代子
    • 学会等名
      第64回日本植物生理学会年会
  • [学会発表] 葉の形成に関わるAS2遺伝子およびAS2/LOBファミリーの起源をゲノムデータベースから探る2022

    • 著者名/発表者名
      岩川 秀和,安藤 沙友里,小島 晶子,笹部 美知子,伊藤 正樹,町田 泰則,町田 千代子
    • 学会等名
      日本植物学会第86回大会
  • [学会発表] 植物特異的なAPC/C阻害タンパク質GIG1とUVI4の細胞周期制御における機能分担のメカニズム2022

    • 著者名/発表者名
      広田 淳也,野本 友司,高塚大知,吉岡 泰,伊藤 正樹
    • 学会等名
      日本植物学会第86回大会
  • [学会発表] シロイヌナズナのGRAS型転写因子SCL28による細胞周期抑制を介した細胞サイズ制御2022

    • 著者名/発表者名
      野本 友司,高塚 大知,山田 圭佑,鈴木 俊哉,鈴木 孝征,今村 美友,山篠 貴史,Cecile Raynaud,Moussa Benhamed,伊藤 正樹
    • 学会等名
      日本植物学会第86回大会
  • [学会発表] シロイヌナズナの細胞サイズ制御因子SCL28はCDK阻害タンパク質をコードするSMRファミリー遺伝子を制御する.2022

    • 著者名/発表者名
      山田 圭佑,広田 淳也,峯田 敬斗,鈴木 俊哉,鈴木 孝征,Benhamed Moussa,野本 友司,高塚 大知,伊藤 正樹
    • 学会等名
      日本植物学会第86回大会
  • [学会発表] 根の表皮細胞の活発な細胞成長を駆動するメカニズムの解明2022

    • 著者名/発表者名
      高塚 大知,柴田 美智太郎,高橋 直紀,関 原明,杉本 慶子,伊藤 正樹,梅田 正明
    • 学会等名
      日本植物学会第86回大会
  • [学会発表] 気孔形成における細胞周期を特異的に制御するDREAM-like complexの提案2022

    • 著者名/発表者名
      峯田 敬斗,野本 友司,高塚 大知,西内 巧,鈴木 孝征,Lucas Lang,Maren Heese, Arp Schnittger,伊藤 正樹
    • 学会等名
      日本植物学会第86回大会
  • [備考] 植物発生生物学研究室ウェブサイト

    • URL

      http://bio.w3.kanazawa-u.ac.jp/bio-s/plantdev/

  • [備考] Science Japan

    • URL

      https://sj.jst.go.jp/news/202206/n0623-03k.html

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公開日: 2023-12-25  

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