研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
22H04720
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
近藤 侑貴 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (70733575)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 維管束 / 幹細胞 / 糖代謝 / 概日時計 |
研究実績の概要 |
本研究では、糖の代謝周期による維管束細胞分化制御機構の解明を目指し、多角的なアプローチから研究をおこなっている。糖は、スクロースの形態で維管束の篩部を通りソース器官からシンク器官へと輸送されるが、糖代謝の周期的変化が糖輸送を担う維管束の発生制御にどのように影響しているのかは全く明らかにされてない。そこで、維管束分化誘導系VISUAL を活用して糖の維管束分化に対する影響を調べたところ、スクロースに維管束幹細胞の分化を抑制することが明らかとなった。スクロース分解酵素をコードするインベルターゼ遺伝子の変異体解析から、植物生体内においてもスクロースが維管束幹細胞の維持に働くことを見出した。これらの成果を論文として投稿した。 また、発光顕微鏡を用いた維管束分化誘導過程の1細胞運命定量イメージング技術を開発し、道管分化運命・篩管分化運命の時空間動態の観察に成功した。これらの方法について論文を投稿し、Quantitative Plant Biology誌に受理された。今年度はルミノメーターを用いて、維管束幹細胞で発現する遺伝子に対するプロモーター:ELUCの形質転換植物体の選抜をおこない、幹細胞ステージで一過的に発現する遺伝子を単離した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VISUALを用いた生理学・遺伝学的解析から、糖の中でも維管束内を輸送されるスクロースが維管束幹細胞分化制御に働くことを見出した。スクロースは維管束分化制御に重要なBES1経路を介することが明らかとなり、糖シグナルの作用についても明らかとなってきており、順調に糖の生理機能解析は進んでいる。一方で、幹細胞分化制御に関わる概日時計制御因子GIGANTEA(GI)との関連性は明らかになっておらず、今後の解析が必要である。 また発光イメージング技術を用いた幹細胞運命イメージング及び運命トラッキングは可能となった。一方で、維管束幹細胞における遺伝子発現の振動及びそれらの意義に関してはまだ検証できていない。これまでに整備を進めた維管束幹細胞で発現する遺伝子のプロモーター:ELUC形質転換植物体から幹細胞ステージで一過的に発現する遺伝子を単離した。ようやく解析の土台が整ってきたので、最終年度に詳細な解析を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
糖シグナル伝達の受容系及びシグナル伝達経路を更に明らかにするため、VISUALを用いたスクロース非感受性変異体のスクリーニング系の確立を目指す。スクリーニングを実施し、糖シグナルの受容やシグナル伝達に関わる新規遺伝子の探索を目指す。また、維管束幹細胞分化を促進する変異体として単離したGIの顕性変異体を利用し、誘導過剰発現株を作成する。過剰発現体を用いた維管束表現型解析及びトランスクリプトーム解析を進めることで、GIの下流で働く遺伝子群を明らかにし、糖シグナルとの関係性を検証していく。 これまでに選抜を進めた維管束幹細胞で発現する遺伝子のプロモーター:ELUC形質転換植物体を用いてVISUAL分化誘導過程における遺伝子発現の時空間動態及び維管束分化運命との関連性を調べることで、幹細胞分化決定の予兆にせまっていく。
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