研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
22H04724
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
嶋村 正樹 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 准教授 (00432708)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 頂端細胞 / メロファイト / 葉序 / カロース / セントリン |
研究実績の概要 |
頂端細胞と周辺部の立体的観察のための組織透明化技術の各種コケ植物への適用を進め,共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞壁の立体的配置の解析を進めた.頂端細胞から分裂した1つの派生細胞に由来する細胞群(メロファイト)について,頂端細胞を取り囲む初期のメロファイトを構成する細胞の分裂パターンと細胞数を立体的に可視化した.頂端細胞が3回の分裂を行う間に,メロファイトの細胞は8細胞以上に増加しており,頂端細胞の分裂周期が,周辺のメロファイトよりも遅いことを明らかにした. 中心体局在性のタンパク質の1つであるセントリンについて,ゼニゴケを用いて遺伝子機能欠損株の表現型の観察を進めた.多重変異体の解析から,ゼニゴケゲノム中に存在する3つのセントリン遺伝子のうちの一つは,栄養組織の細胞板に局在し,細胞板の成長方向を制御し,植物体の規則的な分裂を制御と関連があることが示唆され,他の二つは,精子形成の中心体,鞭毛装置で機能することが明らかになった. 頂端細胞の色素体の数について,ツノゴケ類アナナシツノゴケ,セン類ナンジャモンジャゴケでは,頂端細胞のみが色素体を1つ持つ単色素体性だが,メロファイト中で色素体数が直ちに増加することを確認した.セン類の多くの種では葉原基など細胞分裂が盛んな部位では色素体数が減少し,核分裂に先立つ将来の細胞分裂方向への色素体の移動が見られるようになることが明らかになった. コケ植物のセン類で頂端細胞を取り囲む初期のメロファイトで,細胞壁がカロースに富んでおり,細胞やメロファイト外形に可塑的な性質をもたらし,葉序角度の変調に影響を及ぼしていることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,コケ植物の葉序の周期的形態形成の発生起源を明らかにすることを目的としている.頂端細胞の分裂方向の周期的旋回を生み出す「内的振動子」の役割をもつオルガネラ構造の候補が見つかり,最終的な葉序角への変調・収束に細胞壁の柔軟性の変化が関連することが示唆されたことから,研究は一定の成果を収めていると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
植物頂端部位の立体的観察を行い,細胞の外形と配置を観察する.細胞壁の組織化学的解析,各オルガネラの立体配置の基本的データを取得する.核,細胞壁,色素体,ミトコンドリア,中心体様構造など各構造を染色・可視化する.得られたデータは領域内の共同研究者らと共有し,頂端細胞の周期的分裂制御,葉序形成の立体的シミュレーションを構築する.電子顕微鏡レベルでの頂端細胞の微細形態観察,実験的研究を進める.細胞壁の微細形態,内的振動子の候補として有力な,中心体用構造,色素体について立体的に可視化する.
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