研究領域 | 細胞システムの自律周期とその変調が駆動する植物の発生 |
研究課題/領域番号 |
22H04726
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
武宮 淳史 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (80448406)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 気孔開口 / 概日時計 / フォトトロピン |
研究実績の概要 |
気孔の開度は光や生物・非生物ストレスなど、外部環境の変化に応じて厳密に制御されるとともに、概日時計による内的要因によっても制御される。しかし、概日時計が気孔開閉を制御する分子機構については不明な点が多い。本研究では、光と概日時計のクロストークにより表出する気孔開閉の周期構造の形成機構を解明することを目的としている。本年度は、昨年度に確立したサーマルイメージングによる気孔開閉の周期性を高い時間分解能で解析するシステムを用いて、シロイヌナズナにおける概日時計の中心振動体における気孔開閉の周期性について解析を行った。明暗条件で生育させた野生株を恒明条件に移したところ、光が常に存在するにも関わらず、葉温は明期の始めに最低となり、その後明期の終わりにかけて最高となる周期性を示した。これは、気孔が朝方に開口し、夜間にかけて閉鎖することを表している。次に概日時計の中心振動体であるCCA1 LHYを欠く二重変異体とPRR5 PRR7 PRR9を欠く三重変異体を用いて同様の測定を行ったところ、cca1 lhy二重変異体では葉温が野生株と比較して常に低く、prr5 prr7 prr9三重変異体では逆に常に高い葉温を示し、両変異体ともに周期性の低下が見られた。さらに孔辺細胞特異的遺伝子のプロモーター制御下でCCA1を恒常的に発現させた形質転換体を作製し、その気孔開閉の周期性を解析したところ、この形質転換体では野生株と比較して恒明条件における葉温変化の振幅が低下することを見出した。このことから、孔辺細胞の概日時計が気孔開閉の周期性の形成に寄与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度確立したサーマルイメージングを用いて、概日時計変異体において気孔開閉の周期性の低下を確認するとともに、孔辺細胞の概日時計機能がその周期性の形成に寄与する知見を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
光による気孔開口の変異体や、他の概日時計関連因子の気孔開閉の周期性の解析を進めるとともに、RNA-Seqにより孔辺細胞において発現振動を示す遺伝子を解析し、気孔開閉の周期性の形成を司るマスター制御因子の同定を目指す。
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