研究領域 | 高速分子動画法によるタンパク質非平衡状態構造解析と分子制御への応用 |
研究課題/領域番号 |
22H04741
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 明大 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (20781850)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / 放射光 / 窒化ケイ素薄膜 |
研究実績の概要 |
(1)真空回折計の高度化: B01山本班が中心となり、真空回折計による高感度計測システムの開発が進んでいる。本計測システムでは空気からの背景散乱を除去できるため、従来では測定できない微弱な回折信号の取得が期待できる。2022年度は、空気散乱を除去することで初めて明らかになった、光学素子からの微弱な寄生散乱を低減するため、4象限スリットを追加導入した。その結果、既存のピンホール型スリットと合わせて3連のスリット構造となり、期待通り寄生散乱が大きく抑制されることが示された。 (2)窒化ケイ素(SiN)薄膜からの背景散乱強度計測:高感度計測システムの実現には、結晶ホルダからの背景散乱を抑制することも欠かせない。本研究項目では、(1)で示した高感度計測システムを利用して、結晶ホルダの窓材として利用するSiN薄膜からの背景散乱を計測した。その結果、本計測システムで測定する空間周波数領域では、厚さ100 nmのSiN薄膜からの背景散乱は検出されないことが分かった。 (3)SiN窓の大面積化:これまで利用してきた結晶ホルダは、サイズ8 mm×10 mmのSi/SiNチップの中心に、1 mm角のSiN窓が3×3並んだデザインであった。各窓のSiフレームに近い領域では、空気散乱が除去されているがゆえに、Siフレームからの微弱な散乱が検出されてしまうという課題があった。そこで、マスクレス描画装置などのフォトリソグラフィ装置群を利用して、同じチップサイズの中心に3 mm角のSiN窓を1つ配置した結晶ホルダを試作した。窓サイズの拡大により、試料作製時の破損が懸念されたが、これまで通り、スピンコーターを利用して結晶試料をSiN窓上に展開可能であることが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定と異なり、2022年度後期に真空回折計を利用した放射光実験を実施しなかったため。計測システムのユーザビリティ向上を目的とし、真空回折計の部分的な改造を実施したことなどに起因する。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度の要素技術開発によって洗練化した本計測システムの最終的な性能評価実験をSPring-8で実施し、これまでの成果とともに論文としてまとめる。加えて、背景散乱や測定効率など複合的な視点から、結晶ホルダのさらなる高機能化を目指し、製造プロセスの改良も継続する。
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