• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実績報告書

筋シナジーの発現に向けた筋骨格モデルにおけるモジュラリティの運動学習

公募研究

研究領域身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解
研究課題/領域番号 22H04764
研究機関東北大学

研究代表者

林部 充宏  東北大学, 工学研究科, 教授 (40338934)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワード運動学習 / 運動シナジー / 動的平衡 / 超適応 / 深層強化学習
研究実績の概要

同期現象は、多くの自然機械系に共通する現象である。人間や動物における関節の摩擦や減衰は、エネルギー散逸に関連している。エネルギー散逸系において、複数の関節トルクの発生を管理し、リミットサイクルを形成するために、従来は結合振動子モデルが用いられてきた。振動子モデルの選択にあたっては、結合項の設計や周波数・位相の設定が問題となる。未知のダイナミクスシステムに対して、振動子間の相対的な結合関係を事前に定義する必要があり、これは非常に困難な問題となる。我々は、未知のエネルギー散逸系において、結合振動子を用いずにリミットサイクルを誘導するシンプルな分散型ニューラル・インテグレータ法を発表した。その結果、異なる物理環境に適応する協調構造をもつ同期振動を生成できることを実証した。
また多くの研究により、ヒトは同じようなタスクの間で同じ運動シナジーのレパートリーを再利用していることが示唆されている。しかし、運動シナジーのレパートリーの組み合わせが、系統的に新しい目標に再利用可能かどうかはまだ数理的に確認されていない。本研究では、運動シナジーの組み合わせが、それぞれのレパートリーでは対応できない新しい目標に汎化できることを示す。例として多方向リーチング課題を用いる。まず、強化学習により対象を限定した複数の方策を学習し、運動シナジーの集合を抽出した。そして、運動シナジー集合の活性化パターンを最適化し、運動シナジーのレパートリーを組み合わせることで、元の方策や単一の運動シナジーレパートリーでは達成できない新たな目標に到達できることを実証した。本研究は、一般的なリーチング課題の現実的な力学環境である 7 自由度腕モデルを用い、新しい平面における新しい目標に対する運動シナジー汎化を成功させた最初の研究であると考える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

一般的なリーチング課題の現実的な力学環境である 7 自由度腕モデルを用い、新しい平面における新しい目標に対する運動シナジー汎化を成功させることができた。筋骨格モデルの導入にまでは至っていないが、順調にシナジーの運動学習での役割の理解につながる研究成果を得ている。

今後の研究の推進方策

今後はモジュラリティの運動学習およびモデルベース深層強化学習の役割を調べる。そこで、中枢神経系をモデル化したニューラルネットワークと、実際に運動を行う筋骨格モデルから成る運動学習モデルを構築する。ニューラルネットワークはヒトの神経構造をモデル化した機械学習手法であり、ヒトの神経活動を説明する上では生理学的に親和性が高い。初年度では等尺性運動に関わる神経系をモデル化したニューラルネットワークを構築したが、今後は動的な運動タスクについても対応可能とするように学習を工夫し、その実現可能性を検証する。モジュール層を含むモデルとモジュール層を含まないモデルの2種類の運動学習モデルを用意し、両モデルに関節トルクを発揮させる運動学習を行わせ、学習精度・学習速度・汎化性能の観点で両モデルの学習パフォーマンスを比較する。またこれまで直接的な深層強化学習を採用してきたが、生物では環境のダイナミクス予測をまず獲得し、それに基づいて予測制御を行うことが知られている。通常の深層強化学習に比べてモデルベース深層強化学習は生物の学習制御プロセスに近いと考えられるため、モデルベース深層強化学習のロバスト性を調査することで予測モデルをニューラルネットワークで構成した学習機構による運動学習における汎化能力への寄与を定量的に明らかにする。

  • 研究成果

    (20件)

すべて 2022 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (15件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Joint elasticity produces energy efficiency in underwater locomotion: Verification with deep reinforcement learning2022

    • 著者名/発表者名
      Zheng Chu、Li Guanda、Hayashibe Mitsuhiro
    • 雑誌名

      Frontiers in Robotics and AI

      巻: 9 ページ: 957931

    • DOI

      10.3389/frobt.2022.957931

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Motor synergy generalization framework for new targets in multi-planar and multi-directional reaching task2022

    • 著者名/発表者名
      Kutsuzawa Kyo、Hayashibe Mitsuhiro
    • 雑誌名

      Royal Society Open Science

      巻: 9 ページ: 211721

    • DOI

      10.1098/rsos.211721

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Synergetic synchronized oscillation by distributed neural integrators to induce dynamic equilibrium in energy dissipation systems2022

    • 著者名/発表者名
      Hayashibe Mitsuhiro、Shimoda Shingo
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 17163

    • DOI

      10.1038/s41598-022-21261-w

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Multibranch convolutional neural network with contrastive representation learning for decoding same limb motor imagery tasks2022

    • 著者名/発表者名
      Phunruangsakao Chatrin、Achanccaray David、Izumi Shin-Ichi、Hayashibe Mitsuhiro
    • 雑誌名

      Frontiers in Human Neuroscience

      巻: 16 ページ: 1032724

    • DOI

      10.3389/fnhum.2022.1032724

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Deep Reinforcement Learning Based Motion Synthesis for Prosthetic Elbow Motion Generation2022

    • 著者名/発表者名
      M.H. Ahmed, S. Shimoda, M. Hayashibe
    • 学会等名
      The SICE Annual Conference 2022
    • 国際学会
  • [学会発表] Quantifying Motor and Cognitive Function of the Upper Limb Using Mixed Reality Smartglasses2022

    • 著者名/発表者名
      K. Tada, K. Kutsuzawa, D. Owaki, M. Hayashibe
    • 学会等名
      44th Annual Int. Conf. of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society
    • 国際学会
  • [学会発表] Classification of Human Balance Recovery Strategies through Kinematic Motor Synergy Analysis2022

    • 著者名/発表者名
      K. Shen, A. Chemori, M. Hayashibe
    • 学会等名
      44th Annual Int. Conf. of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society
    • 国際学会
  • [学会発表] 再帰型ニューラルネットワークによる手指運動の即時判別と後だしじゃんけんを用いた認知課題の定量化2022

    • 著者名/発表者名
      赤井田祐樹, 沓澤京, 大脇大, 林部充宏
    • 学会等名
      ロボティクス・メカトロニクス講演会(ROBOMECH2022)
  • [学会発表] 歩行運動の速度と負荷変化に対する時空間筋シナジー解析2022

    • 著者名/発表者名
      松村拓海, 沓澤京, 大脇大, 林部充宏
    • 学会等名
      ロボティクス・メカトロニクス講演会(ROBOMECH2022)
  • [学会発表] モデルベース強化学習を用いたヘビ型ロボットの環境適応性検証2022

    • 著者名/発表者名
      平井虎太朗, 沓澤京, 大脇大, 林部充宏
    • 学会等名
      ロボティクス・メカトロニクス講演会(ROBOMECH2022)
  • [学会発表] Mixed Realityデバイスを用いた上肢の運動機能と認知機能の定量化に関する研究2022

    • 著者名/発表者名
      多田憲矢, 沓澤京, 大脇大, 林部充宏
    • 学会等名
      計測自動制御学会 東北支部 第337回研究集会
  • [学会発表] 筋骨格モデルにおけるモジュールを用いた異なる姿勢への適応能力の効果2022

    • 著者名/発表者名
      福西彬仁, 沓澤京, 大脇大, 林部充宏
    • 学会等名
      計測自動制御学会 東北支部 第337回研究集会
  • [学会発表] 筋骨格モデルによる異なる姿勢での等尺性力制御タスクの学習におけるモジュラリティ効果の検証2022

    • 著者名/発表者名
      福西彬仁, 沓澤京, 大脇大, 林部充宏
    • 学会等名
      第16回Motor Control 研究会
  • [学会発表] 深層強化学習を用いた二脚モデルにおける歩容遷移の実現2022

    • 著者名/発表者名
      古関駿介, 沓澤京, 大脇大, 林部 充宏
    • 学会等名
      第40回日本ロボット学会学術講演会
  • [学会発表] Time-varying Synergyを用いた動作の時空間的構造抽出による模倣学習2022

    • 著者名/発表者名
      沓澤京, 林部 充宏
    • 学会等名
      第40回日本ロボット学会学術講演会
  • [学会発表] 深層強化学習により獲得される二脚歩容遷移にみられるヒステリシス現象2022

    • 著者名/発表者名
      古関駿介, 沓澤京, 大脇大, 林部充宏
    • 学会等名
      計測自動制御学会 東北支部 第339回研究集会
  • [学会発表] モデルベース強化学習を用いたヘビ型ロボットの環境適応性に関する実験的検証2022

    • 著者名/発表者名
      平井虎太朗, 沓澤京, 大脇大, 林部充宏
    • 学会等名
      第23回計測自動制御学会SI部門講演会
  • [学会発表] Mixed Reality デバイスを用いた動的リーチングタスクによる認知機能と運動機能の定量化2022

    • 著者名/発表者名
      多田憲矢, 沓澤京, 大脇大, 林部充宏
    • 学会等名
      第23回計測自動制御学会SI部門講演会
  • [学会発表] モデルベース強化学習により生成された速度の異なる歩行運動パターンに共通するシナジー発現特性の検証2022

    • 著者名/発表者名
      吉田高志, 沓澤京, 大脇大, 林部充宏
    • 学会等名
      第23回計測自動制御学会SI部門講演会
  • [備考] Neuro-Robotics Lab, Tohoku University

    • URL

      http://neuro.mech.tohoku.ac.jp/

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi