研究領域 | 身体-脳の機能不全を克服する潜在的適応力のシステム論的理解 |
研究課題/領域番号 |
22H04783
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
武井 智彦 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (50527950)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フィードバック制御 / 行動制御則 / 文脈 / 前頭頭頂皮質 / 霊長類 |
研究実績の概要 |
ヒトをはじめとする哺乳類の中枢神経系では、急性及び慢性の障害が生じた場合「通常の適応」の範囲を超えた大規模な神経ネットワークでの再構成、すなわち「超適応」が生じることが知られている。例えば、脊髄損傷によって片手が麻痺したサルの場合、発達の過程で使われなくなった同側運動野による制御を活性化して、麻痺した手を通常とは異なる神経回路で制御することができるようになる。これらの大規模な可塑性は中枢神経系でランダムに生じているのではなく一定のルールに従って生じているということである。それでは一体、このような可塑性の優先順序は一体どのように決められているのだろうか?本研究では動物の適応行動は神経系の低次元構造によって規定されているという仮説を検証することを目的とする。 初年度となる本年度は、研究課題の基盤となる1)多チャンネル神経活動記録法の確立と、2)神経マニフォルドの同定技術の開発に注力した。まず、2頭の動物(マカクザル)において1)長期間の安定した信号記録に優れた皮質脳波記録(Electrocorticogram, ECoG)を用いて運動課題中の前頭頭頂皮質の活動を安定的に記録することに成功した。次に2)記録された多次元神経活動信号から、運動課題に特化した神経活動の部分空間(神経マニフォルド)の同定を試みた。その結果、課題の文脈に依存した神経活動空間と運動応答に関わる神経活動空間を分離することに成功した。これにより文脈に依存した柔軟な運動応答が可能になっていると推察される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度である本年度は、研究課題の基盤となる1)多チャンネル神経活動記録法の確立と、2)神経マニフォルドの同定技術を確立することを目標にした。その結果、2頭の動物(マカクザル)において1)皮質脳波記録(Electrocorticogram)による前頭頭頂皮質の活動記録に成功し、さらに2)記録されたECoG信号から、運動課題に特化した神経活動の部分空間(神経マニフォルド)を同定する手法を確立した。その結果、課題の文脈に依存した神経活動次元と運動応答に関わる神経活動次元の分離することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
運動課題中の神経活動記録およびその解析法を検討することで、研究目的とする課題の文脈に依存した神経活動次元と運動応答に関わる神経活動次元を分離することができた。このように研究の方針としては概ね順調であると判断する。来年度はさらに分離した活動次元がどのような神経活動実体によるのかを同定することと、電気刺激によりそれぞれの活動次元の因果関係を検討する。
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