公募研究
幼少時に事故によって一側の上肢遠位部を失ったサルにおいて、大脳皮質の体部位局在がどのように変化したのかを調べた。一次運動野(M1)は中心前回の表面と中心溝の前壁を占めている。障害側では、手指、手根を再現していたと思われる領域が喪失しており、その代わりに断端部が再現されていた。この領域のニューロンは、断端の触診によって反応し、随意運動中にも活動を示した。また低強度の皮質内微小刺激(ICMS)で断端の筋肉の収縮を誘発したた(コア領域)。したがってM1の遠位領域は、断端領域に取って代わられたことになる。低強度のICMSで運動を誘発できるコア領域は、障害側では健常側に比べて縮小していた。一次体性感覚野(S1)は中心溝の後方に存在する。障害側では断端領域は、上肢領域の一部を占めていた。したがって、遠位上肢領域を再現していた領域は、一部、断端領域を再現するようになったと考えられる。上肢遠位部領域と上肢領域全体の面積を、障害側と健常側とで比べると、障害側の上肢遠位部領域は健常側と比べて小さいが、一方、上肢領域全体では差がないことがわかった。補足運動野(SMA)においては、誘発される運動と体性感覚入力で上肢領域を調べたところ、障害側において上肢領域のほとんどは断端部位ではなく、近位部の上肢領域を再現していた。遠位部断端領域と上肢全体領域を、障害側と健常側とで比べたところ、障害側の断端領域は、健常側の上肢遠位部より小さいこと、一方、上肢全体領域は、障害側と健常側とで差がないことがわかった。このようにM1、SMAにおいては、上肢遠位部を再現していた領域が縮小しているのに対し、S1では保存される傾向にあった。運動野と感覚野におけるこのような差が、切断された上肢が依然として存在しているという感覚である「幻肢」の基礎となっている可能性がある。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2024 2023 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 2件、 招待講演 13件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
The Journal of Neuroscience
巻: 44 ページ: e1911222024
10.1523/JNEUROSCI.1911-22.2024
Neurobiology of Disease
巻: 190 ページ: 106362~106362
10.1016/j.nbd.2023.106362
Frontiers in Aging Neuroscience
巻: 15 ページ: 1221341~1221341
10.3389/fnagi.2023.1221341
Cell Reports Medicine
巻: 4 ページ: 101208~101208
10.1016/j.xcrm.2023.101208
Movement Disorders
巻: 38 ページ: 2145~2150
10.1002/mds.29646
Communications Biology
巻: 6 ページ: 914~914
10.1038/s42003-023-05288-x
https://www.nips.ac.jp/sysnp/