研究領域 | 「生命金属科学」分野の創成による生体内金属動態の統合的研究 |
研究課題/領域番号 |
22H04795
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
横山 武司 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20719447)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | リボソーム / クライオ電子顕微鏡 / 生命金属 / マグネシウム |
研究実績の概要 |
細胞内のタンパク質合成装置であるリボソームは、RNAを基本骨格としその外側をタンパク質が取り囲むRNA-タンパク質複合体である。リボソームは内部に、Na+、K+、Mg2+、Ca2+などの金属イオンを取り込んでいる。特に本研究で取り組むマグネシウムに着目すると、RNAのフォールディングを中心にリボソームの構造安定化に大きく寄与している。さらに近年、Mg2+の細胞内への流入が機能低下したリボソームを「プロテクト」するなど、リボソームの機能へも大きく関わることが明らかになりつつある。そこで、本研究ではクライオ電子顕微鏡と生化学による機能解析を駆使し、Mg2+結合によるリボソーム機能向上の仕組みを明らかにすることを、本研究の問いとして設定した。まずは今年度は、マグネシウム結合の変化が、リボソームの構造と活性に与える影響を調べるための実験系の確立を行った。リボソームの活性を測るために、レポーター遺伝子としてGFPを用いて、無細胞翻訳系(PUREシステム)による活性測定を行う系を確立した。また、マグネシウム濃度を測定し、そこに段階的にEDTAを添加することで、マグネシウム濃度低下による翻訳活性の変化を測定した。無細胞翻訳系による翻訳活性の測定と、クライオ電子顕微鏡による構造解析を紐づけて理解することで、マグネシウムの翻訳における役割を統合的に理解する。これまでに、無細胞翻訳系中のリボソームの構造解析に成功し、マグネシウム結合の分布の詳細が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、無細胞翻訳系内のマグネシウム濃度をEDTA添加によって、段階的に減少させ、翻訳活性の測定を行った。EDTAの濃度依存的に合成されるGFPによる蛍光強度の減少が観察された。また、無細胞翻訳系を直接クライオ電子顕微鏡で観察し、データ取得後に単粒子解析を行うことで、翻訳中のリボソームの立体構造を高分解能で取得した。リボソームのRNAで構成されるコア領域に明瞭なマグネシウムに帰属されるクライオ電子顕微鏡密度を取得した。また、領域内の共同研究も積極的に進め、現在までのところ4つのグループとのクライオ電子顕微鏡による構造解析の共同研究に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
2年度目は、溶液中のマグネシウム濃度を変化させ、各濃度ごとに高分解能構造を取得することで、マグネシウム結合の順番を解析する。また、マグネシウム濃度依存的な翻訳活性も無細胞翻訳系を用いることで解析する、
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