マグネシウムは、細胞内でカリウムに次ぐ2番目に多い陽イオンで2価の陽イオンでは最も多く、生命システムの維持において重要な役割を果たしている生命金属である。その役割は、リン脂質との結合や、酵素の捕因子、さらには核酸と結合し、その構造・機能の維持を行なっている。本研究では、核酸であるRNAを中心骨格として構造形成する超分子複合体であるリボソームに着目し、その機能におけるマグネシウムの役割の深い理解を目指した。本研究ではこれまで、大腸菌の翻訳過程に必要な全ての要素を試験管内に再構成した、PUREシステムを用いて研究を進めて来た。sfGFP遺伝子をコードしたmRNAを添加することで、sfGFPの合成量依存的な蛍光強度の増加を指標として翻訳活性を測定する。今年度は、マグネシウムイオンをキレートするEDTAを添加し、無細胞翻訳系内のマグネシウム濃度を調節することにより、翻訳反応に与える影響を測定した。さらに、この無細胞翻訳系をそのまま、透過型電子顕微鏡による観察を行った。機能解析によって、翻訳量の低下がリボソーム構造に与える影響を観察した。これは、リボソームのサブユニットの会合にマグネシウムが必要であることから、70Sリボソームの維持を出来なくなったことが原因であると考えられる。無細胞翻訳系では、マグネシウム濃度の低下依存的に翻訳活性が段階的に低下していく様子が見られていることから、リボソームの分子内でマグネシウムの結合状態がどのように変化するのか、クライオ電子顕微鏡による構造解析も組み合わせることで解析を進めて行く予定である。
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