ゴルジ体に局在する亜鉛輸送体ZnTを発現抑制したHeLa Kyoto細胞の、ゴルジ体の各層板に遊離亜鉛イオン濃度測定蛍光プローブZnDA-1Hを局在させ、遊離亜鉛イオン濃度の変化を計測した。その結果、ゴルジ体に複数存在するZnTはそれぞれ異なるゴルジ体層板の亜鉛イオン濃度ホメオスタシスに関与することが明らかとなった。さらに、亜鉛イオンに対する親和性が高いプローブであるZnDA-2Hを用いて、細胞質の亜鉛イオン濃度への影響を調べたところ、ZnT5/6やZnT7を発現抑制細胞では予想に反して細胞質亜鉛イオン濃度が減少した。一方でZnT4を発現抑制した細胞では細胞質の亜鉛イオン濃度が増加した。ZnT4の発現抑制では一部のゴルジ体層板で亜鉛イオン濃度が増加したが、これは細胞質の亜鉛イオン濃度増加が原因となっている可能性が示唆された。 小胞体からゴルジ体へと目的タンパク質を同調輸送することができるRUSHシステムを用いて、ゴルジ体で亜鉛イオンを獲得することで小胞体へと逆行輸送される分泌経路シャペロンタンパク質であるERp44の輸送を観察したところ、ZnTの発現抑制によるゴルジ体亜鉛イオン濃度変化に応答した輸送の違いが観察された。このことから、ERp44はゴルジ体中の亜鉛イオン濃度に応答して亜鉛イオンを獲得することが明らかとなった。 以上の結果を取りまとめNat Commun誌に発表した。 また、亜鉛イオン濃度測定法の改良にも着手しており、ZnDA-1Hを2波長で励起して得られる蛍光の比が遊離亜鉛イオン濃度と相関することを見出しつつある。今後、金属バッファーを用いて、低亜鉛イオン濃度域におけるデータを取得する予定である。
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