公募研究
これまでの報告に基づくと、銅イオンは、脳室周辺組織に過剰に蓄積している。脳室に最も近い関門は、血液脳脊髄液関門である。そこで、血液脳関門・血液クモ膜関門・血液脳脊髄液関門における銅イオン輸送担体の発現量を測定した。その結果、銅輸送ATPaseであるATP7aおよびATP7b、hephaestinおよびcopper transporterであるCTR1の発現量が、血液脳関門や血液クモ膜関門に比べて、血液脳脊髄液関門において、顕著に高いことが明らかとなった。従って、血液脳脊髄液関門のこれらの銅イオン輸送分子の高発現が、脳室への銅イオンの積極的な供給と、それに続く脳室周囲組織への銅イオンの伝播に寄与したものと考えられる。領域内の連携研究の成果として、グリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)アンカー型タンパク質との関連で興味深い結果が得られた:オルガネラの内腔に亜鉛を供給する初期分泌経路のZNT(ZNT5-ZNT6 heterodimer (ZNT5-6) およびZNT7 homodimer (ZNT7))が、細胞表面でのGPIアンカータンパク質の発現に必須であることを発見し、JBC誌にて発表した(J Biol Chem. 2022 Jun; 298(6): 102011. doi: 10.1016/j.jbc.2022.102011)。ZNT5-6とZNT7の亜鉛輸送機能の喪失は、phosphatidylinositol glycan anchor biosynthesis (PIG) 遺伝子を欠損した変異細胞と同様に、GPIアンカータンパク質の著しい減少をもたらす。メダカのZNT5とZNT7遺伝子を破壊すると、ゼブラフィッシュのPIG変異体と同様の触覚不感症の表現型が見られる。これらの知見は、これまで知られていなかった、初期分泌経路におけるGPIアンカータンパク質の発現制御とタンパク質品質管理に関する新たな知見を提供すると期待される。本成果は、JBC誌のみならず、第22回日本蛋白質科学会年会のワークショップ8「多彩な分野からなる「生命金属科学」の最前線」で発表した。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、それぞれの中枢関門について金属輸送担体を網羅的に同定し、定量できたため。
定量プロテオミクス解析を基盤として、脳内金属分布の制御メカニズムを解析し、血液脳関門・血液クモ膜関門・血液脳脊髄液関門の役割の違いを整理する。
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 4件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 5件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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