研究実績の概要 |
A群レンサ球菌のShrに対する機能阻害剤については、Shrの結合に着目したスクリーニングで既に候補化合物を得ている。この化合物候補についてはA群レンサ球菌のみに強く増殖阻害効果を引き起こし他菌種には増殖阻害効果が得られているものの、化合物とShr, Hbの共結晶構造解析が解けないことからこの結合様式は不明であった。そこで、精製されたShrのHb結合領域とShrのHb結合領域(Shr-N1)とHbとの共結晶構造解析の結果および物理化学的性質と結合予測の結果からShrのHb結合領域の近傍領域であるY197, S198, D199, N200領域にこの低分子阻害剤が結合することで増殖阻害を引き起こしている可能性が示唆された。現在、これらの点変異導入体を作成が終了したため、その詳細なメカニズムについての解析を行っている。A群レンサ球菌は、2つの相同なCDF排出トランスポーター、MntEとCzcDを発現している。これまでの研究で、MntEはマンガンを、CzcDは亜鉛を選択的に輸送することが示唆されていたが、MntE欠損GAS株を用いた増殖試験において、MntEがGASの亜鉛に対する感受性に影響を与える可能性があることが判明した。しかし、MntEは亜鉛の輸送には関与していなかったMntE欠損株ではマンガンによってSpeBの成熟とタンパク質分解活性が阻害された。SpeB欠損株の宿主に対する病原性は著しく低下したことから、MntEとCzcDを介したGASの細胞内マンガンおよび亜鉛レベルの維持は、金属に対する抵抗性を付与するだけでなく、その病原性に必須の役割を果たす可能性がある。
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