2023年度に遺伝子ノックダウン実験を複数回実施した結果、ノックダウン個体、および陰性対照ともに発現量のばらつきが大きい結果となった。ヘファエスチン様タンパク質の遺伝子は、これまで遺伝子ノックダウンを行った他の遺伝子に比べて歯舌組織における発現量が低く、ゲノムDNA混入の影響を大きく受ける事が明らかになった為、現在用いている歯舌組織からのRNA抽出方法の見直しを行い、より純度の高いRNAを多く抽出できる方法を検討した。また、RNAに混入したゲノムDNAの影響を最小限にするため、遺伝子ノックダウン後に発現量定量に用いている定量PCR用のプライマーについても、イントロンを跨ぐプライマーを再設計し、再度遺伝子ノックダウン実験を行っている。さらに今後の遺伝子ノックダウン個体の表現型解析のため、歯舌組織のPIXE(Particle Induced X-ray Emission)分析を実施した。その結果、PIXE分析によりヒザラガイ歯舌組織の鉄の分布を評価可能であることが示された。 GALプロモーターよりも強力なプロモーターであるWTC846プロモーターを用いて磁鉄鉱歯特異的フェロキシダーゼを酵母に組み換え発現させる系を構築した。組み換え酵母の破砕液を用いたフェロキシダーゼ活性評価の結果、GALプロモーターを用いた場合は全く活性が確認されなかったのに対し、WTC846プロモーターを用いて組み換え発現した場合に、わずかに時間依存的なFe2+の減少を示す結果が得られ、フェロキシダーゼ活性が確認された。そこでWTC846プロモーターを用いて組み換え発現させた磁鉄鉱歯特異的フェロキシダーゼの精製を試みたが、活性評価に用いる十分量のタンパク質を得ることができなかった。そのため、より多くの組み換えタンパク質が得られる昆虫細胞発現系に変更し、実験を進めている。
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