公募研究
これまでに、TRPC6チャネルのポア領域内でZn2+選択的透過性を担うアミノ酸を同定し、そのアミノ酸を別のアミノ酸に置換したZn2+非透過型TRPC6変異体ノックインマウス(TRPC6 KYD)を作出した。本年度は、TRPC6 KYDマウスから心筋細胞を単離し、βAR刺激を行ったところ、TRPC6 KYDマウスの単離心筋では、野生型マウス(WTマウス)の心筋細胞と比較して、βAR刺激に対するcAMPの産生量が減少した。したがって、TRPC6を介したZn2+流入が心筋の収縮力を増強させることが明らかとなった。さらに、心不全モデルマウスに TRPC6 活性化作用をもつ小分子化合物 PPZ2 を慢性投与したところ、PPZ2 投与群では、非投与群と比較して心臓の収縮機能のみならず、組織リモデリング(心肥大や線維化)も強く改善されることが示された。一方TRPC6欠損マウスでは、PPZ2 の心不全保護作用が消失しました。また、PPZ2 を処置した心不全モデルマウスにおいて、心筋細胞内 Zn2+量が顕著に増加することも確認された。以上の結果から心室筋細胞の TRPC6 チャネル活性化が、Zn2+流入を介して心臓の収縮力を増強させることを明らかにした。また、TRPC6 活性化薬が、心不全の急性増悪を抑制することもマウスで示めされた。今後、TRPC6 活性化薬が新たな心不全治療法の開発に貢献するものと期待される。現在は亜鉛欠乏させたときの変化をマウス個体レベルで解析している
2: おおむね順調に進展している
PPZ2による心臓保護作用も確認され、生体内でもTRPC6による心機能増強作用が認められたため。
本年度は、BRET(Bioluminescence Resonance Energy Transfer)アッセイを用いて、β1ARとGsタンパク質の共役がZn2+投与により増強されることを示した。今後は、βARとGsタンパク質との共役する部位にできるZn2+配位予測部位に着目し、β1AR変異体を作成する。作成した変異体を用いて、βARと下流のシグナル伝達分子(Gタンパク質やβアレスチン)との共役率に与える影響を明らかにし、βARのリガンド結合親和性制御におけるZn2+の役割を確立させる。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 産業財産権 (1件)
Nature Communications
巻: 13 ページ: 13, 6374
10.1038/s41467-022-34194-9