生命現象には,さまざまに変容するリズム(開始/停止,変調,動機,伝播するリズムなど)を示す性質がある。このような時空間の中で変容するリズムの研究は,生命活動の根本原理を理解する上で重要であるが,研究者自らが実際の細胞を自由に組み立て,変容するリズムを生じる細胞集団を“デザイン”し,実際に実験をすることができるようなプラットフォームはこれまで存在しなかった。本研究の目的は,活動電位を発動する因子を発現させたアフリカツメガエルの卵母細胞をブロックのピースとし,リズムを生成するペースメーカー細胞(Pブロック)と,受け取った刺激を伝えるリレー細胞(Rブロック)をそれぞれ作製して組み合わせ,リズムの変容現象を実際の細胞集団を使って解析可能にするとともに,実際にそれらの細胞集団に起こる変容リズムの時空間パターンを解析することである。我々は2023年度において,ホヤに由来するNav1チャネル,Kv1チャネル,Kir2/5とともに,さらにホヤの心臓の細胞でギャップ結合を形成するのに関わると考えられるCx2(コネキシン2)をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させることにより,細胞間で活動電位を伝播させることに成功した。この結果は,カエル卵アレイが実質的に実行可能な,手に届く技術であることを証するものである。他方,Pブロックの作製に必要であると考えられる因子をアフリカツメガエル卵に発現させることはできたが,自律的に活動電位をリズミックに発する卵を得ることはこれまでにできなかった。あといくつかのステップを経る必要があると考えられるが,問題点は明らかになりつつある。また,ホヤの心臓のリズム生成に関する論文を発表することができた(論文の受理は2024年度になってから)。
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