研究領域 | 人間機械共生社会を目指した対話知能システム学 |
研究課題/領域番号 |
22H04869
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
片上 大輔 東京工芸大学, 工学部, 教授 (90345372)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ディスコース・ポライトネス理論 / 対話システム / BTSJ自然言語コーパス / 言語的配慮 / 比較文化調査 |
研究実績の概要 |
本研究では,ディスコース・ポライトネス理論(DP理論)に基づくスピーチレベルシフトによる親和性の高い対話システムの開発を目的としており,2年間の研究期間内に,(1) DP理論に基づく親密化のための言語的配慮を行う対話行動決定モデルの構築,(2) BTSJ自然会話コーパスに基づき対話相手の属性,関係性,シチュエーションに応じた言語的配慮を行う対話システムの開発と言語的配慮効果の実証実験,(3) 言語的配慮を行う対話システムと人の親和性に関する比較文化調査,を行うことを目標としている. (1)の成果として,DP理論に基づいて会話エージェントが適切なタイミングでスピーチレベルシフトを行う手法をアンドロイドIに実装した.また,ユーザとの社会的関係(年齢属性)を考慮した文末制御を実装した対話を実現することが可能となった. (2)の成果として,昨年度の実験データに基づいてユーザの年齢に応じて適切な丁寧体率を算出し,システムのスピーチレベルを決定し返答を行うシステムをアンドロイドIに実装し,その実証実験を日本科学未来館において行った.72名を対象に実験を行い,事前事後アンケートの比較から,スピーチレベルの制御がアンドロイドIへの嫌悪感に対する受容性を向上させる可能性が示唆された. (3)の成果として,昨年までの成果の日本とアメリカに加え,イギリス,オーストラリア,フランス,中国の6か国の母語話者を対象として分析と考察を行った.調査の方法として,クラウドソーシングサービスSurveyMonkeyを用いて実験参加者を募り,オンライン上で質問紙調査を実施した.これらに関する成果として,FSS2022において口頭発表を行ないFSS優秀発表賞を受賞した.また,対話型擬人化エージェントの受容性に関する日米の比較調査の研究が知能と情報の論文誌に掲載された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は,(1) 対話システムと人間の親和性向上のための対話戦略PPS・NPSと敬語・友達口調に基づく対話決定モデルのモデル化,(2) BTSJ自然会話コーパスに基づき対話相手の属性の推定に基づく言語的配慮を行う対話システムの開発と言語的配慮効果の実証実験,(3) 文化による違いに対応する対話と国際的評価検証の,3つの計画を順次行う予定で進めている. (1) 対話システムと人間の親和性向上のための対話戦略PPS・NPSと敬語・友達口調に基づく対話決定モデルのモデル化と(2) BTSJ自然会話コーパスに基づき対話相手の属性の推定に基づく言語的配慮を行う対話システムの開発と言語的配慮効果の実証実験において,日本科学未来館での2回にわたる実証実験を実施し,合計144人の実験参加者に参加していただき,成果を示すことができた.現在のところ順調に計画が進められている. (3)の文化による違いに対応する対話と国際的評価検証においては,6か国の異なる文化的背景を持つ実験参加者を対象として以下2つの調査を実施した. ・調査1:社会に進出するロボットとの対話に関する受容性の質問紙調査 ・調査2:マルチモーダル情報を備えた対話型擬人化エージェントとの対話を想定した印象評価 さらに,調査1と調査2を行った後に,人型エージェントとの対話について感じたこと,本調査について感じたことについて自由記述してもらった.実験の結果,国ごとに性別や年齢による受容性の違いが見られた.これらの結果によるさらに詳細な分析が可能と考えられるため,今後行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度においては,(1) DP理論の枠組みとBTSJコーパスの分析に基づくスピーチレベルシフトと敬語回避ストラテジーの使い分けを活用した親密化のための言語的配慮を行う対話行動決定モデルの構築,(2) 対話相手の属性に応じた言語的配慮を行う対話システムの開発と言語的配慮効果の実証実験,(3) マルチモーダル情報を備えた人工物と人の親和性に関する比較文化調査を行う予定である. (1) DP理論の枠組みとBTSJコーパスの分析に基づくスピーチレベルシフトと敬語回避ストラテジーの使い分けを活用した親密化のための言語的配慮を行う対話行動決定モデルの構築と(2) 対話相手の属性に応じた言語的配慮を行う対話システムの開発と言語的配慮効果の実証実験,の関連として,現在までに,会話の場面や相手の文末表現によって対話システムの文末表現を変更することによる人間らしい対話システムを開発し,新学術領域の計画班に協力してもらい,アンドロイドIに実装を行い,アンドロイドIと人間間の対話による実証実験を科学未来館において実証実験行うことができた.敬語回避ストラテジーの実装を行った今年度の成果に関しても引き続き科学未来館において同様の規模の実証実験を検討している. また,(3) マルチモーダル情報を備えた人工物と人の親和性に関する比較文化調査に関して,昨年までにグローバルなクラウドソーシングの会社であるSURVEY MONKEYにて,日本,アメリカ,中国,フランス,オーストラリア,イギリスの6ヵ国において条件を統一した大規模な調査実験を行いデータを取得したので,これらのデータをもとに,より詳細の追加分析を行う予定である.
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