ロボットによるカウンセリングの研究が進展していることを背景に,2022年度前半の研究課題として,20代~40代のカウンセリングを仕事とする,公認心理士及び臨床心理士の資格を有する人々18名(男性2名,女性16名)を対象に半構造化面接(Zoomによるオンライン,20分程度)を実施した.結果として, (1)から「カウンセリング領域においてロボットが利用可能な場面」,(2)から「カウンセリングロボットに期待する容姿」に対するインタビュイーの態度のカテゴリーが抽出された.ロボットが利用可能な場面で一番多く言及されたのは「社交不安や対人場面で困難を感じる人への対応」であり,その他に「受診初期の構造化面接場面での利用」や「発達障害の方との対話」が挙げられた.期待される容姿については「クライアントによる・クライアントが選択可能がよい」「人型である必要はない・人型でないほうがいい」が最も多く,「動物型・ぬいぐるみが望ましい」「中性」「女性」が挙げられた.また,この結果を元にオンラインでの質問紙調査を行い,男性は女性よりも女性容姿のロボットを好む傾向,非専門家は専門家よりもロボットのパフォーマンスと性別容姿の間に関連を見出さない傾向,女性のカウンセリング専門家はロボットによるカウンセリングに対する期待が低い傾向が示唆された. さらに,性別と同時に対ロボット態度に影響を与える要因の探索を目的とした質問紙調査を行った.結果として,批判的思考態度は対ロボット定的態度を抑制し,保守的態度は高める傾向が認められたものの,男性と女性によってその影響のあり方が異なることが示された.男性では客観性重視の態度と権威主義的態度が影響を持つ一方,女性では証拠重視の態度と現状維持傾向が影響を持つことが示され,男女で種類の異なる批判的思考態度と保守的傾向が関連することが見いだされた.
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