これまでの研究において要因として扱われたきたジェンダーは実情は生物学的性別であり,その影響に関する研究結果は一貫していない.また,最近では,LGBTQといったセクシュアルマイノリティの人々が技術の分野に身を置いている場合どのような認識を抱いているかに関する研究も行われている.このような状況を考慮し,自身の男性性・女性性に関する認識の強さが対ロボット態度や感情に与える影響の探索を行った. 1回目の調査では,対ロボット態度とジェンダー認識の直接的関連を明らかにすることを目的として,男性性と女性性を独立に測定する心理尺度および対ロボット否定的態度を測定する心理尺度から成る質問紙調査を,20代から50代の男女計500名を対象にオンラインで行った.分析の結果,女性性の低い男性は女性性の高い男性および女性性の低い女性と比べてロボットの社会的影響に対する否定的態度が低いという交互作用が認められた.第2回の調査では,ジェンダー認識の強さの連続的値を用いた分析を試みることを目的として,第2回調査と同じジェンダー認識の尺度およびロボットに対する不安と信頼関係への期待を測定するから成る質問紙調査を,20代から50代の男女計500名を対象にオンラインで行った.分析の結果,ジェンダー認識,特に女性性自認は女性アンドロイドおよび機械的容姿の人型ロボットに対する不安や関係性期待に正の影響を与えること,個人の生物学的性別よりも女性性の自認が強いほどこれらのロボットへの不安および期待が強くなることが示唆された.男性性の自認は女性性の自認よりも影響範囲が狭く,女性アンドロイドに対する不安や関係性期待には影響を持たなかった.また,ジェンダー認識は男性アンドロイドに対する不安や関係性期待への影響範囲が狭く,年齢や生物学的性別のほうが多くの影響を持つことが示され,ロボットの種類によって影響を与える個人特性が異なることが示唆された.
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